安保という名目で
安保従事協議会
テロや海賊問題などに対応するため比米両政府が新設した安全保障従事協議会(SEB)に関して、ルーセンホップ駐比米大使館報道官はSEB設立は比側からの提案だったと説明。ロムロ外務、クルス国防両長官も同様にこの点を強調し、「安全保障における、二国間での画期的な取り組みとなるだろう」と主張した。
これはどういうことなのか。両長官は本当にSEBが比側による立案だと言ったのだろうか。だが、これは実際的には問題の実相ではない。双方の思惑を知ることなしに本質を理解することは不可能だ。外交的戦術とは国益を反映したものなのだ。どちらがSEBを立案したかを強調することで、米国が安全保障問題に関与したという本質が不明瞭になることが懸念される。
ブッシュ米政権が進める対テロ戦略の枠組みを考慮すると、SEB設立は容易に理解できる。さらに、中国によるアジア域内での軍事プレゼンス拡大の文脈から米国の「協力」の意図がより明確になってくる。
中国は近年、安全保障分野で米国との協力策を探っている。対応を迫られている米国防省は今年二月、「四年ごとの国防戦略見直し」で中国の軍事的脅威を指摘した。
SEB立案が比側としても、ブッシュ米政権が比側の国益に配慮を示したわけではなく、自国の国益を重視した米国防省の助言で設立に署名したのだ。米国は域内各国と同様の措置を取るだろう。
深刻なのはSEB対応事項が詳細に定義されていない点。エルミタ官房長官は、テロや国際犯罪組織、海上安全、自然災害に加え、スパイ行為や汚職も範囲内と説明。同長官は自国の選挙不正問題を失念したのだろうか。 (28日・インクワイアラー)