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5月15日のまにら新聞から

人口増に歯止めを

[ 691字|2006.5.15|社会 (society)|新聞論調 ]

実感できない「経済成長」

 不安定な政情や原油高騰にもかかわらず、比証券取引所の株価指数がほぼ七年ぶりの高水準に達した。八百万人を超える比人海外就労者からの送金も増え続けて、ペソ高傾向を強めている。

 大統領府も認めているように、国民が経済成長の成果を実感できないようでは、これら数字の示す「経済の好調さ」は無意味だ。最近発表された民間調査機関の世論調査では、六・九%が「過去三カ月間で飢えを感じた」と回答した。調査結果に基づいて算出すると、実に二百八十万もの世帯が「飢餓状態」にある。

 この国の貧しさを知りたいのなら、世論調査の結果を待つまでもない。貧しさは至る所にあふれている。首都圏の路上で物ごいする子供は絶えることなく、高級住宅地のへいにへばりつくように並ぶ掘っ立て小屋群も拡大を続けている。農村部では、若者が日々、生まれ故郷を離れ、仕事を求めて都市部へ流れている。

 「国民の飢え」を解消するため、政府は首都圏の八千世帯を対象にした緊急雇用対策を打ち出した。さらに、公共事業での地元住民の優先雇用や食品などを安価で提供する国営売店の増設、子供を対象にしたコメ無償支給拡大も検討している。

 経済発展の果実が、人口増によって食いつぶされている現状で、これら政策は一時しのぎの対策と言わざるを得ない。特にアロヨ現政権は「家族計画」に消極的で、海外就労を思いとどまらせるだけの雇用、そして雇用を創出する海外からの投資も不十分だ。貧困により悪化した治安情勢が投資家を遠ざけ、さらなる貧困を生むという悪循環もある。まず、人口増に歯止めを掛けない限り、国民の貧困と飢えは決して解消されない(11日・スター) 

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