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10月3日のまにら新聞から

迫る無策のツケ

[ 690字|2005.10.3|社会 (society)|新聞論調 ]

看護学校の粗製乱造

 高給を求める看護師の海外流出に歯止めが掛かりそうだ。フィリピン看護協会は「低水準な看護学校の増設は、卒業生の質を落としている。海外就労する比人看護師のイメージ悪化につながる」と警告している。他の国も看護師派遣に熱心であり、比人看護師は海外の就労先で自らの力不足を間もなく実感するだろう。

 それは看護教育に対する規制の不足だけではない。同協会は、三十八ある認可された看護学校の教育内容がお粗末であり、他の二十八校は運営認可すら得ていないと報告している。高等教育委員会は未認可の二十三校を閉鎖しようとしたが、閣僚クラスの高官らに阻止されたという。

 同委員会の閉鎖命令を阻んで得点を稼ぐ政治家は多数いる。しかし、看護学校増設を規制できなかったツケは国に跳ね返ってくる。比人看護師への需要の高まりで、医師までが看護師コースを受講、看護学校が急増した。同委員会が教育内容を規制せず、お粗末な看護学校の運営者らに好き勝手な「指導」を任せたら、学生の質の低下は不可避である。外国人看護師受け入れ国は高度な教育を受けた他国の看護師を選び、比人看護師は自分たちが評価されていないと次第に自覚するだろう。

 海外への就労が厳しくなり、低水準の看護学校を卒業者が比国内での就労を余儀なくされれば、彼らは医師や看護師不足で苦しむ公共医療施設の抱える問題に直面するだろう。最近の報告では、首都圏外の医療施設が、医師、看護師の不足で閉鎖に追い込まれているという。生き残った医療施設が、お粗末な学校でろくな教育を受けずに卒業した看護師らであふれれば、この国の医療は悲劇に陥るだろう。(9月28日・スター)

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