自己満足に浸るな
山積する経済課題
ペソの対ドルレートは上昇し、米最大の年金基金、カリフォルニア公務員退職機構(CalPERS)は比への投資継続を決めた。昨年の国内総生産(GDP)成長率は通貨危機前と比べても高い六・一%に達し、財政再建の要となる税制改革八法案は既に二法案が成立した。さらに、下院では残る法案の審議が進む。
経済に関する朗報にアロヨ大統領が喜ぶだけの理由は確かにある。議員も部分的にその功績を誇ってよいだろう。だが、指導者たちはいつまでも自己満足に浸っていてはいけない。財政危機は依然目前にあり、経済を長期的な成長軌道に乗せるため、なすべきことは山ほどある。
最近の財界アンケート調査で、回答者の大半が今年のGDP成長率は昨年を下回ると答え、企業幹部らが比経済を慎重にみていることが明らかになった。CalPERSの投資継続も、コンサルタント会社の投資評価で比が許容基準をかろうじて上回っただけの話だ。米格付け会社のS&Pは先月、財政再建に向けた政府の努力にもかかわらず、比の国際格付けを一ランク下げた。
未整備な社会・産業基盤、官僚的な形式主義と汚職、当局の低い犯罪摘発能力、一貫性のない経済政策、労働者の能力低下など、比を取り巻く投資阻害要因はまったく解消されていない。改革を遂行するためにはある程度の政治的安定が必要とされるが、税制改革や投資促進のための法案の幾つかは、成立すれば国民が反発して社会不安を引き起こす恐れもある。
政府が幸福感に浸れるのは今だけだ。しかし、行く手には多くの障害が待ち構えており、それを乗り越えるために強い政治的意志が求められている。(3日・スター)