腐臭漂う検察発言
国軍・アブ内通疑惑
国軍とイスラム過激派アブサヤフとの内通問題という歴史的な重大事への判断を急ぐあまり、司法省はゆゆしき不正義を犯した。
検察官は元人質・バーンハム夫人の法廷証言をアブサヤフの足取りを検証するためには使用せず、逆に証拠追及を阻止するために利用した。つまり、司法省は国軍の疑惑を晴らすために夫人の証言を利用したのだ。
記者団の傍聴が禁止され、司法省は「国軍とアブサヤフとの癒着はないと夫人自身が述べた」と発表した。ダセラ検察官は「夫人の法廷証言により、あらゆる問題や疑惑が解決されよう」と述べ、グチェレス司法次官は「夫人の著書が作り出した誤解が晴れた」と語った。
これを司法権の行使と呼ぶのなら、アブサヤフの誘拐事件の審理に司法正義は存在しないことになる。
まず、なぜ検察側が内通に関する質問をさえぎったのか。弁護側が夫人に質問した時、検察官が直ちに反対、パヒムナ判事もこれを認めた。
問題は「検察側がなぜ内通疑惑は裁判の本筋とは無関係と判断したのか」である。国軍幹部とアブサヤフとの癒着が本当なら次のことの説明がつく。①バシラン島の病院に立てこもったアブサヤフが国軍の包囲網をやすやすと突破した②国軍は昼間にしか戦闘をせず追跡もしなかった││。
たった一人の証言で国軍の内通疑惑という大問題が片付くはずはない。上下両院の調査を精査し、疑惑解明のために必要な証人はまだたくさんいる。夫人の著書にも検討すべき個所は多い。法廷で夫人は意味のある発言をしなかったことが分かっていたのに、検察官は「夫人の発言で疑惑はぬぐえた」と発言したのである。(2日・インクワイアラー)