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6月16日のまにら新聞から

政治的な選考過程

[ 726字|2003.6.16|社会 (society)|新聞論調 ]

比芸術賞の変質

 「フィリピン芸術賞」の受賞者が五人選出されたが、選考過程に問題が多い。アーティストのマラン氏の訴えを紹介する。同氏は賞の一時停止を提案、五つの理由を挙げた。

 ①汚職とわいろが国家文化芸術賞選考委員会に横行する②活動中の芸術家を軽視し、亡くなった芸術家を復活させているにすぎない③権威のない「お笑いぐさ」の賞に成り下がりつつある││などである。

 マラン氏は、同賞は十│二十年後に新しい才能の成長を待って復活するべきだと述べた。「芸術家は死後に賞をもらうために活動しているのではない」とも語っている。また、現在の芸術賞を運営するのは「腹に一物」を持った人々だという。傑出した能力を持つ芸術家も、彼等に刃向かえば受賞のチャンスはない。

 受賞するためには推薦を受けて登録され、投票で票を獲得しなければならない。このため、芸術家と取り巻きは「政治活動」を展開することになる。宣伝用の弁護士すら雇わなければならないそうだ。

 なぜ芸術家に宣伝活動が必要なのか。最高の創作をしても謙虚なアーティストは受賞できず、一方、野心家でエゴの強い人物は家族や友人の推薦を受けて登録されることになる。

 選考委員は自分で芸術家を評価できないのか。たとえば、ピュリッツァー賞は登録など必要ない。全ての芸術家が受賞候補で、絞り込み作業は事務局が行う。

 受賞して「ナショナル・アーティスト」の称号を得る人は、芸術家仲間からも高く評価される人物であるべきだ。同賞の第一回受賞者は画家のアモルソロやフランシスコだった。議論の余地なき巨人だ。現在の受賞者が何ら尊敬の対象とならないのなら、「ナショナル・アーティスト」とは一体何なのか。(13日・インクワイアラー、ニール・クルス氏)

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