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12月2日のまにら新聞から

政府に無能のらく印

[ 710字|2002.12.2|社会 (society)|新聞論調 ]

豪、加大使館閉鎖問題

 豪州、カナダ両国は「信頼に足る具体的な脅威情報がある」として在比大使館を一時閉鎖した。豪大使館と同じビルに入居する欧州連合(EU)代表部も閉鎖。両国はフィリピンへの渡航延期も国民に勧告した。情報の詳細は不明だが、イスラム過激派のテロの可能性があるという。

 インドネシア・バリ島の爆破事件で極めて神経質になっている豪政府は、比政府に閉鎖理由を示していない。脅威は伝染し、同じ建物に入居するEU代表部までが同じ日に一時閉鎖に踏み切った。

 しかし、数ブロック離れたカナダ大使館が閉鎖したのは不可解だ。前例のない一方的閉鎖で、条件反射的、非論理的対応と言える。情報の共有は治安維持に欠かせない。政府は平手打ちを食った。治安問題に関して無能とのらく印を押されたに等しい。豪政府の極端な反応は明らかにバリの爆破事件の影響だ。しかし、カナダはテロの攻撃を受けたことはなく、マニラの大使館が標的にされるほど攻撃的な政府ではない。

 さらに、米国の対テロ戦争への報復としてなぜ在比各国大使館が狙われるのかも不可解だ。より政治的意味のある本国を狙わずなぜフィリピンの豪大使館を攻撃するのか。

 タイミングも最悪だ。閉鎖は膨張する財政赤字と司法長官の収賄疑惑の真っ直中で起きた。

 観光業への打撃も大きい。イスラム過激派、アブサヤフの誘拐事件で、観光業は既に大きな打撃を受けている。新たなテロの潜在性はゴードン観光長官の観光再生の夢をうち砕いた。

 「信頼に足る脅威」が国内のテロリスト、国外のテロリストいずれによるのか調査すべきだ。恐怖と不安によって政府を揺るがそうとする一派による仕業の可能性もある。(30日・インクワイアラー紙) 

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