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9月30日のまにら新聞から

せめて財産奪還を

[ 714字|2002.9.30|社会 (society)|新聞論調 ]

戒厳令布告30周年

 戒厳令下の状況を知らずに育った世代がいる。彼らは、下院議員や知事などに復権した「マルコス」しか知らない。マルコス一族は今もなお国内屈指の富を維持しているし、イメルダ元大統領夫人は往時のままに自慢ののどを披露し続けている。

 戒厳令布告から三十年。現在の治安情勢は確実に悪化した。このため、政府に「より強い統治」を求めるグループやマルコス家と声を合わせて戒厳令に積極的な評価を与えようとする勢力さえ出ている。

 過去の記憶を保持し後世に伝えようとするグループが存在しなければ、国民は数千人が不当に逮捕され、拷問され、処刑されたという事実をはるか昔に忘れてしまっていたことだろう。治安悪化でマルコス時代を懐かしむ声さえ出る中、政府、政治への無関心はマルコス型独裁の蘇生につながることを忘れてはならない。

 若い世代は、マルコス家による不正蓄財と政府がそれを取り返そうとしていることを知っている。しかし、不正蓄財奪還が実現しなかった場合、これらさえ忘れ去られてしまう恐れがある。スイス国内の銀行預金は不正蓄財の一つと見られてきた。スイス当局は先に口座凍結措置を解いてしまったが、比政府側の関心、働き掛けが不足していたためと言わざるを得ない。

 このような状況下でもイメルダ夫人は人生を楽しみ続けている。道化師のようないで立ちに度肝を抜かれる国民は今も少なくない。夫人主催のパーティーは戒厳令下のようなけばけばしさはなくなったが、国民の生活水準から見ればぜいたく以外の何物でもない。圧政を許しておきながら、誰一人としてマルコス家の人間を罰することができない政府。ならば、せめて奪われた国民の財産を取り返せと訴えたい。(21日・スター)

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