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9月2日のまにら新聞から

豊かさへの渇望

[ 728字|2002.9.2|社会 (society)|新聞論調 ]

違法滞在者送還問題

 マレーシア・サバ州に違法滞在している比人の強制送還問題は、外交問題として抗議できるし、棚上げされている領土問題を再燃させることもできる。だが、問題がどのように決着するかはまだ見えてこない。

 この送還はマレーシア政府が行っている違法滞在者取り締まりの一環であり、「テロとの戦い」が絡む対策の一つでもある。また、比人違法就労者の出先であるミンダナオ地方はイスラム過激派、アブサヤフやイスラム急進派、モロ・イスラム解放戦線(MILF)、イスラム過激派組織のジェマ・イスラミヤの拠点があるため、取り締まりを避けられない。

 一部報道では、外交的な抗議により比人退去者へのマレーシア政府の取り扱いがいくらか改善したという。しかし、一挙に行われる大量送還は退去者にとって不快なものだ。

 だが、退去者をめぐる悲話にもかかわらず、彼らの多くはできるだけ早くサバ州に戻るつもりだと取材者に語っている。彼らの出身地であるミンダナオ地方には就職口もなく、仕事があってもその給料はすずめの涙ほどだと話したという。

 サバ州への移動を駆り立てる要因は豊かさへの渇望である。多くの比人が海外での就労や移住を求めるのと同じだ。失業や不完全就業、生活向上機会の欠乏が国離れの原因なのである。サバへの「移住」は特別なことではないと考えているミンダナオ出身者は多い。ちょっと船に乗って出掛けるような感覚だからである。

 比政府はマレーシア当局の不当な扱いを抗議すべきだ。政府が領土問題を再燃させなくても、送還を唯一防ぐ方法は、比人が違法移住することを止めることだ。ミンダナオ地方での暮らしがサバ州より良くなり、本国での生活に満足できれば可能になるだろう。(8月29日・スター)

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