まず戦略見直しを
国軍の兵力増強問題
国軍が二万人にも及ぶ戦力増強計画を打ち出した。陸軍に四十大隊を追加し、共産ゲリラやイスラム反政府勢力を一掃するという。陸軍は現時点で国軍総兵力十一万五千人のうち六万八千人を占めている。
反政府勢力は、新人民軍、モロ・イスラム解放戦線(MILF)など総勢二万五千人。陸軍司令官の言葉を借りれば、「マレーシア軍は国内ゲリラを抱えていないにもかかわらず、フィリピンより多い兵力を保持している」らしい。
司令官はマレーシアを引き合いに出したが、それは国軍の戦力を増強する理由には決してならない。新人民軍は兵力こそ増えているものの、その活動はここ数年沈静化しつつある。また、MILFは政府と和平交渉を重ね、停戦協定をも結ぼうとしている。イスラム教徒自治区のミスアリ前知事一派が国軍拠点を襲撃した十一月中旬までは、国軍の「主要な敵」はイスラム過激派、アブサヤフだけだったはずだ。
戦力増強の理由があるとするならば、それは前知事一派の反乱以外にあり得ない。前知事をめぐっては、イスラム諸国会議機構の盟主、サウジアラビアが支援の意向を示しているとされる。事実ならば、前知事派の存在は比政府にとってより脅威になるだろう。しかし、現時点ではまだ推測の域を出ておらず、増強の理由としては不十分だ。
増強を認める前に検討すべき課題がある。国軍の戦略だ。兵力の消耗を避けるため、空爆や遠く離れた地点からの砲撃を中心に作戦を組み立てているが、これではゲリラ一掃は難しい。作戦情報がゲリラ側に漏れて逃走を許すといった失態も多い。国軍が今やるべきことは、兵力を増やすことではなく、兵士を指揮している上層部の一新だろう。(4日・タイムズ、アマンテ・ビゴルニア氏)