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4月30日のまにら新聞から

司法の手にゆだねよう

[ 698字|2001.4.30|社会 (society)|新聞論調 ]

前大統領逮捕に際し

 ついに歴史上初めて、前大統領が逮捕された。法廷で、また街頭でこれから何が起きたとしても、この国にとって初めての試練となる。この試練がより成熟した政治体制へと導かれることを期待するのみである。

 しかし、この試練は同時に政治的な後退をもたらすかもしれない。挑発的な分子が大衆の怒りを引き起こし、それまでの努力の積み重ねを一夜にして最悪の政治的混乱に変えてしまうこともあり得るからだ。

 前大統領の逮捕を支持するグループは、ここ数日、公務員特別裁判所が逮捕状執行に際し、時間をかけすぎていると批判している。普通のケースであれば、逮捕状の発行を受けた警官が即座に自宅に押し込み、容疑者を逮捕するというのだ。しかし、今回は状況が違う。数千人の前大統領支持派が逮捕を阻止しようと動き、統一選挙キャンペーンが熱気を増しつつある中で、前大統領を拘束して司法で裁こうというのである。それなりの状況判断が必要である。逮捕支持グループの考えるように、一方が勝利者として訴追問題を処理することはできない。

 一方、エストラダ支持派は「庶民派」のカードをちらつかせ、選挙で貧困層と富裕層の分裂を引き起こして状況をより不安定なものに変えようとしている。

 今確かなことは、エストラダ氏は拘束されただけで、有罪判決を受けた訳ではないということだ。社会学者のランディ・ダビッド氏は「フィリピン人はパワーに対する畏れと恐怖の中で生きてきた」と弊紙のコラムに書いている。「ボスの言葉が法律」と考えてきた人にとって今回の事件は大きなショックだったに違いない。しかし、政府も認めているように、今は司法の手に全てをゆだねるべきである。

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