「爆弾」抱えた大統領
シン枢機卿の辞任要求
今、国は沈み、政府はパニック状態に陥ろうとしている。「小エラップ」と呼ばれるザモラ官房長官でさえ、「国内経済は破滅に近づいている」と言っていることからも、深刻さをうかがい知れる。
町長から上院議員、副大統領、そして大統領へ駆け上がってきた政治家エラップは幸運だった。熱狂的な支持者に支えられ、カトリック教会が毛嫌いする「数々の罪」をも魅力の一つにしてきた。
逆に不幸だったのは、欲を抑制するすべを知らず、権力を自らの放蕩(ほうとう)のために使ったことだ。マルコス政権下の政商に取り囲まれたその姿は、米国映画のマフィアのドンそのものだ。
そして、映画でマフィアが破滅の道を歩むように、大統領が築いたダムの一角も崩れた。違法賭博フエテンのボスだった南イロコス州知事が、「ボスの中のボス」とされる大統領に牙をむいたのだ。
知事に続き、シン枢機卿が大統領辞任を要求した。大統領は、この辞任要求が巧妙に仕掛けられた「時限爆弾」だということを悟らなければならない。枢機卿の言葉は国内にとどまらず、カトリック教会を通して世界に届くのだ。
かつて、マルコス大統領が「枢機卿など何の力も持っていない」と語り、独裁政権の崩壊という手痛いしっぺ返しを受けた。マスコミの世論調査で八割の国民が「疑惑は事実」としている状況下、エストラダ大統領は独裁者と同じ道をたどる可能性がある。(13日・スター、テオドロ・ベニグノ氏)