新聞論調
The Tone of the Press
誰が責任を負うのか
凶悪犯の恩赦問題
国民が新聞などの政権批判に喝さいするのは、エストラダ大統領に真の「側近」がいないためだろう。良い例として、イタリア人神父殺害の凶悪犯の恩赦による身柄釈放を挙げることができる。エストラダ大統領自身が驚いたほどだから国民がろうばいするのも無理はない。
北コタバト州トゥルナン町で一九八五年四月、イタリア人神父が六人グループに殺害された。恩赦された凶悪犯を含む六人はマルコス独裁政権下に暗躍した軍事組織のメンバーで、神父はグループの狂気の犠牲となり、血祭りに上げられた。
昨年、法務省の下部組織である恩赦釈放委員会の複数の委員が大統領に凶悪犯の恩赦を推挙。大統領が神父殺しの凶悪犯を含む五百人の恩赦リストに署名したため、十二月には釈放されてしまった。
「前例などを考慮すると、恩赦は妥当である」と、法相や他の委員は恩赦決定を擁護している。凶悪犯への恩赦で、起こりうる政治問題を考慮しなかったのだろうか。法相や同委員会に責任がないとすれば、多数いる大統領顧問の中で、この問題に適切対応できる人物はいなかったのだろうか。
大統領自身が五百人の名前すべてを確認することは困難だろう。大統領に署名すべき書類を手渡す前に誰かが、合法的なものか、人々に受け入れられるものなのかなどを検討するべきだったはずだ。
側近者の能力の貧しさから、政権はこれまでも問題を起こしてきた。恩赦問題で大統領は顧問団を入れ替えの必要性を痛感しているはずだ。(4日・スター)
賭博投資に歯止めを
ホー氏の事業拡大問題
マニラ湾の豪華水上レストランの開店セレモニーにマカオの「カジノ王」スタンリー・ホー氏は現れなかった。中国の犯罪組織との癒着関係やクリントン米大統領への政治資金供与など、フィリピン国内で噴出した疑惑に対しもよう眺めを決めたようだ。
疑惑に対し「事実無根だ」と英字紙二紙に全面広告で反論した経緯には、ホー氏の「うろたえた」様子をうかがうことができる。当初計画では、国会、カトリック教会、市民団体から娯楽関連企業への投資などに対する不満の声が上がるとは予測できなかったのだろう。
しかし、ホー氏がフィリピンでの事業拡大を放棄したとは言えない。娯楽関連企業などへの増資計画などが持ち上がっている。
大統領府の確固たる「信任」を欲していたホー氏の期待に、エストラダ大統領はこれまで応えてこなかった。だが、全面広告が掲載された一月三十一日になって、「犯罪者であると証明する書類はあるのか」「うわさに過ぎない」などとホー氏を突然擁護し始めた。その上、外資獲得の妨害行為だとも警告している。
これでは、ホー氏の言いなりではないか。水上レストランでのカジノ営業は窮地に追い込まれているが、ホー氏が賭博(とばく)事業への投資をあきらめるはずはない。
国内の批判が止むか、エストラダ政権が国内の批判を無視するか——。ホー氏は状況の好転を待ち望んでいる。(6日・インクワイアラー)