まにら新聞記者が、大阪市で開催されていた大阪・関西万博に足を運び、東南アジア地域各国の展示を鑑賞した。回想連載第3回では、マレーシアパビリオンを振り返る。「調和の未来を紡ぐ」というテーマを掲げ、多様な文化と活気ある経済を、具体的な都市計画と共に表現していた。
マレーシア館の建築デザインは、ポルトガル館などにも携わった、隈研吾建築都市設計事務所が担当。垂直に並ぶ竹がリボンのようにうねる、動きのある外観が特徴的だ。来場者は竹の流れに沿うように館内へ入場する。
日中は、最後尾の特定が困難になるほど待機列が伸びた。大屋根リングから離れた場所に位置しているため、長時間日差しを浴びて待たなければならず一時撤退。日没後には列が消え、待ち時間なしで入場できた。
同館は六つの展示から構成される。一つ目の展示は、都市部の町並みを再現した「文化ホール」。19世紀のイギリス植民地期に誕生した建築「ショップハウス」の外観を壁に作り、年代ごとの様式の特徴を説明していた。実物大の屋台のワゴンには、マレーシア料理の食品サンプルが大集合。国内の街並みを表現したジオラマは作りが細かく、実在する公共交通機関「ラピドKL」のロゴがついたモノレール模型がみられた。
国内各州の概要をまとめた二つ目の展示「進歩の回廊」を抜けると、三つ目の「プログレス・ホール」につながる。同国の開発目標が詳しく紹介された、未来のマレーシア像が提示されたエリアだ。デジタル人材の育成やグリーン経済の推進など、テクノロジーを用いた都市計画がアピールされていた。
四つ目の「調和の木」は、国内アーティストとボルネオ島の職人が手掛けた、大樹のようなラタン編みの芸術作品。葉の色は、オレンジとピンクがマレーシア西部の食文化と多様性、青がボルネオ島北東部サバ州の海、緑が同島北西部のサラワク州の山を表す。ラタン編みの伝統を称え、マレーシアの職人技術と、国の調和の精神を表現したという。
調和の木の外周をまわりながら下ると、五つ目の展示「サステナビリティホール」に到着。都市と自然が共生する未来のマレーシアが舞台のアニメが上映されたほか、再生可能エネルギーや生物多様性に関する取り組みを紹介していた。最後の展示では、マレーシアの著名人や建築物を称えるパネルが並んでいた。
▽食と踊りでにぎわう
マレーシア館には、マレー料理を楽しめるレストランが併設されている。「ナシ・アヤム(白飯と鶏肉)」や、「ミーゴレン(炒め麺)」などの料理が弁当形式で提供され、店内飲食用の椅子とテーブルも複数設置されていた。東南アジア各国のパビリオンの中では、比較的規模の大きなレストランだった。
レストランに隣接する土産物屋も充実。売り場面積はフィリピン館のものと同程度だったが、菓子類から雑貨までカジュアルな品物が多く展開されていた。密度の高い陳列と、豊富な食品類の展開に、食文化へのこだわりが表れていた。
パビリオンの前では、頻繁に舞踊や音楽のショーが開催され、常ににぎわっていたマレーシア館。展示の序盤で示されたマレーシアの現在地を、民芸とデジタル技術で未来の都市像に編み込んでゆく流れが見事だった。(宇井日菜)