ハロハロ
ロゲ国際五輪委会長が、大きな封筒から取り出した紙片をくるりと反転させると「TOKYO」が映し出された。おおっ!と、思わず声が出た。2020年夏季オリンピック大会。だめだったら日本はどうなる?不安が一瞬で吹っ飛んだ。午後、マンダルーヨンのOTB(場外馬券売り場)へ弾む足取りで出かけた。
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64年の東京五輪のとき記者5年目、警視庁七社会クラブ詰めだった。大会参加を機に亡命者が出るのではないか、との懸念があった。国際スポーツ大会のたびに当時のソ連や東欧など社会主義国からの亡命が続いたからだ。マークは通訳センター。警視庁が東京を訪れる外国人向けに期間中、四谷の第4機動隊に設置した。電話で対応するここで亡命情報が引っかかるかも。ナマズというあだ名のキャップから「センターへ張り込め」と命じられた。
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結局、空振りに終わった。2週間の大会中、亡命の電話などなかった。陸上の最終日だったか、チケットが回ってきて見て来いという。ありがたい裏方への配慮だ。国立競技場でヘイズ(米)が力走するのを目の当たりにした。閉会式の豪華な花火は場外で取材がてら眺めた。華麗な演出、分刻みの精密運営で世界を驚かせ、ローマとメキシコをつなぐ素晴らしい大会となった。7年後は、前回と違い文字通り真夏の開催。炎暑をどう乗り切るか。季節的条件も大きな課題だろう。(紀)