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5月5日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 532字|2008.5.5|社会 (society)|ハロハロ ]

 「死期が迫っているのに自分ではそれと気づかぬ男が急に乱脈な生活を改め、身辺整理を始めたりする」︱︱若死にしたフランスの作家、R・ラディゲはこう書いている。こちら、それなりの年齢だからそんな事態も仕方あるまいと身辺整理を始めた。妻に先立たれ、後の整理が大変なのだ。まず洋間を占領していたグランドピアノ。ネット上で複数の業者にメーカー名や型式などを知らせるとすぐ査定がきた。最高値が十八万円。

 外房に持っていたちっぽけな家も以前から隣人の求めがあったので手放すことに。既に二十年近く経過しているので、良い値のつくわけもない。たたき売りだ。特派員時代にパリで知り合った故西村計雄画伯の小品を二点所有しているが、うち一点を親友に譲渡。次は書物だ。結構いい値段で売れたという友人にそそのかされ、ブックオフへ。

 手始めに持参した十冊の本を若い女店員がマニュアルに従って品定めする。三冊が売れず「お持ち帰り」だった。理由は、背表紙が黄ばんでいるから。ここでは、文化は「見てくれ」だけで売買されている。若いころ、手元の書籍を神田や本郷の古本屋に持ち込んで金を作り,欲しい本を買ったものだが、こんなあじけないのは初体験だった。(紀)

ハロハロ