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階段のない家

1999/3/21 社会

仕事ができる喜び

 リサール州カインタ町にある身体障害者の教育・作業施設、「タハナン・ワラン・ハグダナン」(階段のない家)のシンボルマークは車いすに乗った人。前傾気味になって車を回す力強い姿が描かれている。

 一九七三年にベルギー人修道女のバレリアーナ・バエルツさんが、オーストラリアにある同様の施設をモデルに創設した。教育、職業訓練、雇用機会を提供することで、障害者の自立を目指す。用地は教会が貸し出し、施設建設ではベルギー政府が援助した。

 四ヘクタールの敷地には、作業所、学校、住居、バスケットボールコートなどが点在する。施設はすべて平屋で階段や段差がなく、車いすが自在に行き来している。

 フィリピンでは一九九一年に障害者の雇用機会の均等などをうたった法律が成立したが、守られていないのが現状だ。「階段のない家」という命名には、平等な社会を実現するという願いも込められている。

 現在のメンバーは全国から集まった四百七十人で、七割が身体障害者。残りの三割はその家族などで、作業の手助けをしている。

 作業時間は午前八時半から午後四時までで、企業から請け負った釣り針に糸を結んだり薬の包装といった手作業、コンピューター入力のほか、オリジナルの木工や紙製品の製作、自分たちも使う車いすや義手義足の製造などをしている。日給は百—百二十ペソという。

 片腕の人が手早く薬の箱を折って組み立てていたり、車いすの人がコンピューターのキーをたたいている。黙々と手際よく仕事をこなしている様子は、普通の工場や職場と少しも変わらない。所長代理のロメオ・キントスさん(34)も「有給休暇もあり、基本的には会社組織と同じ」と言う。

 昨年十一月、教育文化スポーツ省の協力でリサイクル事業を始めた。首都圏近郊七州の学校にアルミ缶入れを設置し、定期的に回収する。自分たちでつぶした後、業者に熔解してもらい、車いすなどの材料にするという。古新聞・古雑誌も回収し、シュレッダーにかけて手すき紙を作っている。

 手すき紙を使ったカード作りの最終工程で働いていたベンゲット州出身のエルリンダ・カビガットさん(36)。はさみで花や葉を切って工夫をこらしたデザインに張り付けながら、「ここでの生活は楽しい。何より仕事ができるから」と話す。

 夕刻に構内に現れたフィッシュボール売りも身体障害者。フィッシュボールを揚げるなべを置いた台と車いすを組み合わせた車に乗り、カメラを向けると笑顔を見せた。(池田華子)

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