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2月28日のまにら新聞から

ヒラヤ・ギャラリー

[ 869字|1999.2.28|社会 (society)|名所探訪 ]

比現代美術の発信地

 マニラ市エルミタ地区は観光客を相手とする画廊や古美術商が軒を並べていることで有名だ。UN通りとマビニ通りの交差点近く、この画廊の町の一角にヒラヤ・ギャラリーがある。一見近くの画廊と変わらないが、中に一歩入ると六十平米ほどの空間にはフィリピンの新しい芸術の光が溢れている。

 現在、ギャラリーで紹介されているのは、ガブリエル・バレドの作品展「アニマ」。スクラップを使って、仏像やキリスト聖像、人間の肉体や機械・歯車の部品、様々な宗教的意匠などを組み合わせた黄金色に輝く彫刻的作品の群。水の流れるような音とビデオ映像も加えて「生命の営み」を鑑賞者に訴えている。

 ギャラリーのオーナー、ディディ・ディーさん(44)は一九八〇年に画廊スペースを開設した理由を教えてくれた。

 「中国人移民だった父がフレームなどの画材屋をここで始めた。大学卒業後この店の経営を任された時、最初に考えたことはフィリピンの若い芸術家に発表の場を提供することだった」。

 フィリピンの芸術界、特に絵画分野では、農村風景を題材にした数多くの名画を残した巨匠、アモルソロ(一八九二—一九七二年)らを中心とする印象派が主流を担ってきた。新しい表現を求める若い芸術家の作品が画廊などで紹介されることはそれまで少なかったという。

 ネグロス島で活躍する画家、ヌネルシオ・アルバラドさん(49)がたまたま打ち合わせで来ていた。「ヒラヤはマニラで唯一芸術家の自由を認めてくれるギャラリーだ。ここでの展示を通じて自分の作品も今年三月に開館予定の福岡アジア美術館のコレクションに選ばれた」と語った。

 「ヒラヤ」とはタガログ語で「イマジネーション」の意。エルミタ地区が持つ雑多な人間のエネルギーと想像力を大切にしたいというディーさんは、「近い将来コーヒーショップを併設して、忙しいビジネスマンも夜間ここで芸術を鑑賞出来るようにしたい。そして画廊に他の芸術、例えば音楽家や舞踏家などを呼んで分野を超えた芸術イベントもどんどん主催したい」と企画のイメージは広がるばかりだ。(澤田公伸)

 

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