サラ副大統領が昨年11月に「自分が殺されたらマルコス大統領夫妻とロムアルデス下院議長を確実に殺害するようある人物と契約した」と会見で明言した問題を巡り、国家捜査局(NBI)のハイメ・サンティアゴ局長は12日、初期捜査の結果を踏まえて、司法省検察局にサラ氏を扇動罪(刑法142条)と重大脅迫罪(同法282条)で刑事訴追するよう勧告を出したことを明らかにした。報告書は11日付でリチャードアンソニー・ファドゥリオン検事総長宛に提出され、12日に受領された。
サラ氏の「暗殺」発言は、今月開廷が決定したサラ氏への弾劾裁判の第一の訴因にも挙げられており、サラ氏は政治的・刑事的責任に同時に直面する。
サンティアゴ局長は、ラジオインタビューで「副大統領でも刑事責任を免除されるわけではない」としながら、「だが憲法は弾劾裁判だけを副大統領か解職される状況に挙げており、仮に有罪判決が出た際に副大統領が解職されるかどうかについては、われわれは法解釈を持っていない」と述べ、前例のない事態であることを強調。また、サラ氏を勾留した場合の保釈については、「保釈可能な罪状だ」と述べた。
司法省も12日、声明を発表。今後の手続きについて「被告発人(サラ氏)からの反対証言の提出を求め、両者の主張について十分な証拠に基づいているか、十分な有罪の可能性があるかを吟味し、起訴するかどうかを決定する」と説明した。
弾劾裁判が開かれる上院の議長を務めるエスクデロ氏は12日の会見で、弾劾裁判と刑事訴追の関係について「基本的には別物。おそらく訴追は弾劾裁判開廷に先立つだろうから、弾劾裁判の検察役が、検察やNBIが持つ証拠を追加の証拠として提出することは可能だ」との見解を示した。
またサラ氏にかけられた「重大脅迫罪」の疑いについて、「実際の害の有無にかかわらず、特定の人物への現実的かつ差し迫った危険を引き起こす声明を罰するものだ」とし、「最高裁の判例では、受け手が実際に恐怖を抱いたかどうかは同罪の構成要件とならない。重要なのは脅しや恐れを引き起こす含意の有無だ」とした。扇動罪についても「最高裁は言論の自由は暴力、反乱、混乱の教唆(きょうさ)に及んでいないと判断している。同罪は、実際に混乱が発生したかどうかにかかわらず、公の混乱を引き起こし安定を乱す含意があることが要件となる」とした。
エスクデロ氏はそれに先立つ10日、上院での弾劾裁判の開廷時期について、7月21日の大統領施政方針演説(SONA)後になるとの見通しを示している。
サラ副大統領は12日、「これは予想通りの動きだ」とする短い声明を発表した。以前は「自分が殺害されたという条件下のことであり、『暗殺』という言葉を使っていない」と反論していたが、特定の人物に大統領殺害を依頼したということは撤回していない。(竹下友章)