比は世界9番目の多さ ジャーナリスト殺害未解決指数
比で過去10年間にジャーナリストが殺害され事件の未解決ケースが18件。人口比で世界9番目に多い
ジャーナリストの権利を守り、世界各国の言論弾圧を監視する非営利団体「ジャーナリスト保護委員会」(CPJ)=米国ニューヨーク市=がこのほど、2024年に発生したジャーナリスト殺害事件未解決指標に関する報告書を公開した。それによると、フィリピンでは過去10年間にジャーナリストが仕事を巡り殺害されたものの容疑者逮捕、または逮捕後も訴追・有罪判決が出ていない未解決ケースが18件に上っており、人口比でみると世界で9番目に多い。
同指標に関する報告書の23年版ではフィリピンは世界で8番目に人口比当たりのジャーナリスト殺害事件の未解決ケースが多いと指数化されていた。
CPJが10月30日に公開した報告書によると、世界で過去10年間(2014年9月1日~24年8月31日)におけるジャーナリスト殺害事件の発生とその未解決件数が人口比で最多となったのはハイチだった。ハイチは未解決件数が7件確認されているが、人口が1170万人に過ぎないことからその人口比当たりの頻度が顕著となっている。
ハイチに次いで多かったのはイスラエルおよびその占領地域で、特に昨年10月7日のイスラム過激派ハマスによるテロ事件以降にガザ地区とレバノンでガザ紛争を取材していたジャーナリスト5人が殺害されるなど過去10年で8人の殺害事件が確認され、容疑者の有罪判決確保など解決されていない状況が続いている。ガザ紛争では記者証を付けて取材していたジャーナリスト5人が殺されており、「民間人であるジャーナリストをあえて標的とする(イスラエル軍による)戦争犯罪である」とCPJは報告書で非難している。
同報告書ではジャーナリスト殺害事件の未解決指数でランキングが高かったその他の国としては、3~10位にソマリア、シリア、南スーダン、アフガニスタン、イラク、メキシコ、フィリピン、ミャンマーが入っている。フィリピンは軍事クーデターで混乱が続くミャンマーに加え、ブラジル(11位)、パキスタン(12位)、インド(13位)などやはりジャーナリストを標的とした襲撃事件などが多発している国より危険だと評価されていることになる。
CPJによると、過去10年間で世界で仕事を巡り殺害されたジャーナリストは合計241人に達しており、そのうち容疑者の有罪判決の宣告など事件が解決したケースは全体の4%未満にすぎない。また、容疑者の一部だけが有罪判決を宣告された部分的解決ケースは全体の19%で、残りの77%のケースは容疑者らへの有罪判決の宣告に全く至っておらず正義が回復されていない状況だという。
フィリピンで過去10年間にジャーナリストが殺害されその後も容疑者の有罪判決宣告に至っていないケースが18件というのは、メキシコ(21件)とインド(19件)に次いで3番目に多い。アフガニスタンで同数の18件確認されているが、人口が比の方がアフガニスタンより2倍以上多いことから、フィリピンの順位が9位にとどまっているだけで、未解決事件の件数だけでみると、フィリピンはジャーナリストにとって世界で3番目に危険で犯罪容疑者が裁かれない国となっていることが分かる。(澤田公伸)