「議員削減で対応する」 最高裁のスルー除外判断で
スルー州をBARMMから除外する最高裁判断受けフィリピン選管トップ「法定定員割れで選挙する」
今月9日に最高裁がスルー州をバンサモロイスラム自治地域(BARMM)構成州から除外すると判断したことを受け、中央選挙管理委員会のガルシア委員長は26日、外国人特派員協会(FOCAP)向けに開いた会見で、「スルー州を行政上はサンボアンガ半島地域と扱うことを決定した」と発表した。さらに、スルー州除外に伴い来年初めて実施されるバンサモロ議会選挙について、スルー選挙区に分配されていた7議席を削減し、定員割れとなる73議席だけの選挙を行う意向を示した。
昨年制定されたバンサモロ選挙法はバンサモロ議会の定員を80人と規定。このまま選挙が行なわれれば、選挙後に同法が定める議員定数が満たされない状態になる。来年5月に初のバンサモロ議会選挙を控える中、予定されていた立候補届け期間まで1カ月を切ったタイミングで出された最高裁判断により、自治政府発足の見通しが一層不透明になってきた。
今回の最高裁の判断について、ガルシア委員長は「この申し立ては何年も前に提出されたもの。選管委員長として認識していなかったし、(このタイミングで判断が下されることは)予想だにしていなかった」と率直な驚きを表明。
判断が今後覆る可能性については「あるかないかといえばある」としながら、一部で提出が検討されている再審請求動議について「動議が提出されたからといって、判断の法的効力が直ちに停止されることはない」と指摘。また一部BARMM暫定議会議員により7議席の再配分が検討されていることについて、「われわれにはそれを待つ時間はない」と明言。「現行法および法の一部を構成する最高裁判断に従うことが務めであり、未確定な想定によって行動することはない」とし、バンサモロ選挙法が規定する80議席を満たさないことを承知で73議席について選挙を行う方針を示した。その上で「個人的意見」として、「最高裁判断の内容を明確化する法律を通すべきだ」との考えを示した。
さらに同委員長は、7議席欠員問題のほかに、バンサモロ地域政党登録にも影響が出ていると指摘。「バンサモロ選挙法では80議席のうち40議席が地域政党から選出されると規定されているが、地域政党として認められる要件の一つに、党員数1万人以上という条項がある」とし、「現在16政党が登録を求めているが、スルー州の党員を除外すると、政党要件を満たせなくなる政党が間違いなく出てくる」と強調した。
その上で「なるべく多くの政党に登録してもらうために、(同地域における)立候補証明の提出期間を10月1~8日から11月4~9日に延期した」と報告した。
BARMMの設立を規定するバンサモロ基本法は2018年に制定され、19年に住民投票で承認された。スルー州だけはこの際にBARMM加入への反対が上回ったが、同法では前身のムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)を構成する南ラナオ、バシラン、マギンダナオ、タウィタウィ、スルーの5州を1地域として扱うと定められていたため、同法は承認され、スルー州は今月までBARMMの一部を構成していた。(竹下友章)