「弾劾の理由作りが目的」 公聴会召喚にサラ氏が反発
サラ副大統領「下院は副大統領府予算要求を材料に私を弾劾にかけようとしてる」
サラ・ドゥテルテ副大統領は18日、下院行政規律・説明責任委員会の呼び出しに応じた。20億3700万ペソ(24年比1億5200万ペソ増)が盛り込まれた25年の副大統領室の予算要求を問題視する同委員会に対し、「私は次の選挙に立候補しない。(予算を使用して)政治活動をするわけではない」と訴え、「議会は簡単に予算を削ることができる。にもかかわらず直接呼び出すのは、弾劾する理由を作ろうとしているからだ」と反発した。
サラ氏は委員会に対し「立法調査を超えた組織的攻撃だ」と非難。「この調査は、資金の不正使用、説明責任、行政規律に関するものではないことは明らか。むしろ、将来の政治的争いを防ぐために、私の名誉と私の職務の信用を失墜させることだけを目的としている」とした。
さらに「(予算額の)根拠が不十分なら、全部不承認にすればよい」と、開き直りともとれる発言を行った。
6月まで教育相を兼任していたサラ氏は、2022~23年の副大統領室および教育省予算に総額7億7500万ペソの機密費が含まれていたことで昨年から批判の的になっていた。そんな中、25年副大統領室予算の増額で批判が再燃。下院では25年の副大統領室予算を約20億ペソから約7億ペソに削減する勧告も出された。
今回の公聴会に先立ち、下院委員会はサラ氏に説明の機会を与えるため同氏を10日にも呼び出していたが、サラ氏が拒絶。「議会軽視」とも取れる姿勢に委員からは「まるで甘やかされて育った子どもだ」とのあきれ声も漏れていた。
▽低予算で成果の前例
サラ氏はマルコス政権とドゥテルテ家の対立激化を背景として、6月に教育相と「共産主義勢力との武力衝突を終わらせる国家タスクフォース」(NTF―ELCAC)の共同議長を辞任。閣外に出たことで、マルコス・サラ正副大統領ペアを中核とする政治連合「ユニチーム」は事実上瓦解した。そのため、マルコス大統領のいとこで「側近」のロムアルデス氏が議長を務める下院では特に、政府・与党からの庇護(ひご)は望めない状態となっている。
ドゥテルテ前政権期のロブレド前副大統領もサラ氏と同様に「野党副大統領」だった。その時代の副大統領室予算は、最高でも約9億ペソ(2021年)と現副大統領室の半分。しかしロブレド氏は少ない予算から官民連携貧困削減事業、新型コロナの抗原検査やワクチン接種事業など数々の福祉事業を展開し、高い評価を獲得している。サラ氏は「たとえ予算がなくとも取り組むべき事業を行う」と宣言しており、政治的逆風の中で前任者と同様に目に見える成果を出せるかどうかが、ミンダナオ地域以外の地域で支持をつなぎとめられるかを左右しそうだ。(竹下友章)