「留学交流は強力な外交」 柘植芳文外務副大臣に聞く
柘植外務副大臣「国費留学生の受け入れは強力な外交の一つ。日比留学交流に全力尽くす」
初めてフィリピンを訪問した柘植芳文外務副大臣が21日、2024年国費留学生壮行会に出席した。今回の訪問で、マナロ外相、カルロス郵便局長、マニラ中部ルソン日比協会のブニ会長、パリ五輪金メダルのユーロ選手ら比代表団との面会を重ねたほか、軽量高架鉄道(LRT)1号線延伸事業の視察をするなど精力的に外交日程をこなした同副大臣が、国費留学生壮行会に際して記者団の質疑に応じた。
(竹下友章)
―訪比の目的は。
今回は、特にフィリピンの将来を担う国費留学生を激励するために訪問した。私はまだ外務副大臣を拝命して日が浅いが、2万を超える郵便局が地域を支える郵便局事業に長年関わってきた。それを通じて、人と人とのつながりの重要性を痛感している。国家間の関係を支えるのは人と人とのつながりだ。
この点、国費留学生として訪日してくれるフィリピンの若い方は、両国の架け橋となる重要な存在。昨日、マナロ外相と2026年の日比国交正常化70周年を見据えて、幅広い分野での2国間の連携強化について意見を交換した。人的交流の重要性で一致し、今後とも外務副大臣として日比の関係を一層強化するため尽力する。
こうした若者が国費を含め留学しながらお互いに学んで文化を知ることは極めて友好な外交の一つ。国家間の関係の強化にこれは大いに役立つ。
―日本人奨学生の返済苦を背景として、「なぜ外国人に給付型の奨学金を国費で支給するのか」という声も高まり、国会でも質問されている。国費留学生制度の意義を、国益から説明する必要性が高まっているのではないか。
そうした声があることは承知しているが、色々な制度を同一視すべきではない。国費留学生制度はフィリピンを含む諸外国の優秀な留学生を日本に受け入れることにより、日本との架け橋となる人を育てる制度。帰国後に母国で行政官やビジネスマンとして活躍したり、現地の大学の学長となって日本の大学間交流に貢献したりと、これまで多様な国で多様な形で国と国との架け橋になってきた。こういったことの理解を深めるよう丁寧に説明する必要がある。
日本留学を通じ、日本のありのままの姿を肌で感じてもらい、人と人との絆を築いて帰国した元留学生は、今後の日本と各国との関係を一層充実させるに当たり、宝のような存在。大切にしないといけない。特にフィリピンの方は、元日本留学生同窓会を自ら設立し、現在約2万人の会員を擁するまで成長、世界最大級の同窓会組織になっており、大変心強い存在だ。
国費留学生を中心とする元留学生が築き上げた人と人とのつながりは、黄金時代とも言われる現在の日比関係を支える大きな基盤を形成している。引き続き、外務副大臣として両国の留学交流の促進に全力を尽くす。
―留学生に日本でどんな経験をしてほしいか。
経験は一番大きな財産。いろんなことを経験してほしい。一番期待しているのは日本の方々との心の触れ合い。日本人が持つ優しさ、温もり、そして隣国を愛する気持ちなどを知っていただければありがたい。
今回フィリピンを訪問し、フィリピン政府や日系企業など様々な方と交流した。長年日本で研鑽を積んだカルロス・ユーロ選手をはじめとする五輪選手団を激励したり、日系人や、留学生との交流を深められた。
その中で、日本とフィリピンの関係を支えているのは、安全保障や経済だけでなく、人と人とのつながりだと改めて感じた。これから、訪日する国費留学生には「一期一会」の精神で日本の多くの人々とじかに接し、豊かな人と人とのつながりを築くことを通じて、現地で人を介してしか知り得ない日本の魅力に目を向けてもらいたい。
そして、ありのままの日本の姿を自らの経験を通じて体験し、将来フィリピンにおける真の日本通となって、日比の新たな架け橋となって活躍することを期待している。