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8月12日のまにら新聞から

比軍機に発光弾発射 中国戦闘機がスカボロー上空で

[ 948字|2024.8.12|社会 (society) ]

南シナ海スカボロー礁上空で中国軍の多目的戦闘機が、定期パトロールを行っていた比空軍輸送機を妨害し発光弾発射

 サンバレス州西沖のパナタグ礁(英名スカボロー礁)上空で8日朝、哨戒活動中のフィリピン空軍機を中国空軍の多目的戦闘機が妨害、さらに比空軍機の進路上にフレア(発光弾)を発射した。ブラウナー参謀総長が10日に声明で発表した。

 国軍によると、8日午前9時ごろに、空軍が中型輸送機「NC212」で定期上空パトロールを行っていた際、中国機に遭遇、「危険な妨害行為」を受けた。比空軍機はクラーク空軍基地に帰投。乗組員にけがなどはなかった。

 この事件について同参謀総長は「比空軍の航空機と乗組員に危険を与え、比の主権と管轄権内における上空飛行を妨害し、航空の安全を規定する国際法に違反している」とし、中国を非難した。

 マルコス大統領は11日に声明を出し、事件について「強い非難」を表明。中国軍の航空機の行動について「不当、違法、無謀だ」とし「海上問題が沈静化し始めたばかりなのに、わが国の領空が不安定化することが懸念される」と指摘。「比は常に外交と平和的手段による紛争の解決にコミットしている」としながら、中国に対し「海洋・上空の両方で完全に責任のある行動が取れることを証明するよう強く要求する」とした。

 11日にラジオ番組に出演した国軍のフランセル・パディリャ報道官は「われわれには領土を守る使命がある。中国の妨害に遭おうとも、上空飛行の自由を規定する国連海洋法条約(UNCLOS)とシカゴ条約に則りわれわれの権利を公使し続ける」と宣言した。

 一方、中国軍南部戦区は10日夜に声明を発表。「比軍航空機NC201は、中国からの再三の警告にもかかわらず、黄岩島(パナタグ島の中国名)の領空に不法侵入した」とし、その上で「中国海空軍は法律に従って警告、監視、追跡、排除を行う必要があり、合法的な行為だ」と主張した。

 パナタグ礁はルソン島から約135カイリにある岩(高潮高地)で、領海は有するが排他的経済水域(EEZ)は持たない。伝統的には比が実効支配していたが、2012年に発生した比中艦船のにらみあい事件後に中国が占拠。比政府はそれ以降、同礁への中国による人工物設置を、南シナ海アユギン礁(英名セカンドトーマス礁)の比座礁艦撤去に並ぶ「レッドライン」として中国を警告してきた。(竹下友章)

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