消えた慰安婦像を探すべき 戦時性暴力被害者を訪問
ホンティベロス上院議員がパンパンガ州カンダバ町マパニケに住む戦時性暴力被害者の団体マラヤロラズのメンバーらと面談
リサ・ホンティベロス上院議員=野党・自由党=は3日、太平洋戦争末期に日本軍によるゲリラ掃討作戦で多数の村人たちが殺され、女性らが数日間にわたり兵士からレイプ被害を受けたとされるルソン地方パンパンガ州カンダバ町マパニケを訪れ、同町に住む被害女性らと面談した。面談で2017年12月にマニラ市ロハス通り沿いに設置されたフィリピン人慰安婦像が18年4月に当局によって撤去され、19年8月にカトリック教会内に再設置される直前に行方不明になったことを聞いたホンティベロス議員は、「消えた像を探し出すべきだ」として上院で調査する意向を示した。
今回の面談は、昨年3月に出された比の戦時性暴力被害者に関する国連女子差別撤廃委員会勧告の完全な実施をフィリピン政府に求める上院決議案を出したホンティベロス議員が被害女性たちの現状を把握し、上院決議を通じた公聴会を開催するための準備が目的。
女性支援団体のカイサカや司法支援団体センターローの関係者らによる案内でホンティベロス議員は同日午前、被害者が組織した団体マラヤロラズの代表マリー・キランタンさん(88)と副代表のピラール・ガランさん(88)、メンバーら13人と対面した。マラヤロラズの生存メンバーは現在18人。
国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)は2023年3月8日、日本占領期における比人の性被害者に対する差別や苦痛に対する救済措置を放置してきたとして、比政府に被害者への謝罪や補償に向けた基金創設などを勧告した。これを受けてマルコス政権は昨年5月に元慰安婦に対する支援を約束し、社会福祉開発省を通じて被害者らに現金給付を行ったが、9月に「(ほとんどが男性の)軍人が手厚い名誉ある処遇を受けているのに対し、女性生存者に政府が同等の補償を提供していないことは差別」と認定した同委員会の判断に対し、「継続的差別は存在しない」と真っ向から否定した。
生存女性らとの会合を終えたホンティベロス上院議員は、日本軍による集団レイプがあったとされるブラカン州サンイルデフォンソ町にある「バーハイ・ナ・プラ(赤い家)」を訪れ、整備されないまま朽ち果ててつつある歴史的建造物の現状を視察した。同議員は戦時性暴力の歴史を次世代に伝える必要があるとした上で、「赤い家の保存に向けて努力する一方、消えた比人慰安婦像を探し出すために上院で調査を行なう必要がある」と強調した。
▽特攻隊員像の撤去を
一方、ホンティベロス上院議員は今回の訪問で、戦時性暴力被害者の住むパンパンガ州に旧日本軍の特攻隊員像が建てられているという話を聞き、「知らなかった。その場所を教えて欲しい」とした上で、「そのような像は撤去すべきだ」と発言。同議員は「まず政府に働きかけ、マラヤロラズの被害者たちにさらに痛みを与えるような碑は撤去するよう求めるなど、われわれ国民が行動を起こすことが必要だ」と述べた。(ロビーナ・アシド、澤田公伸)