海警局最大船が領海侵犯 南シナ海でプレゼンス誇示
「モンスター」として知られる中国の世界最大級巡視船が南シナ海で10日間の巡視を実施。比島の領海を侵犯
比沿岸警備隊(PCG)のタリエラ報道官(准将)は27日、中国海警局が保有する世界最大級巡視船の「海警5901」(165メートル)が10日間にわたって南シナ海を巡視し、その中で南シナ海で比が実効支配する高潮高地パグアサ、パローラ両島周辺などの比領海を侵犯、パラワン州エルニド町から34カイリまで接近していたと発表した。船舶自動識別装置(AIS)をオフにしている船舶でも観測可能なカナダ政府供与の海洋監視システムを使用して追跡した。
海警局が同巡視を開始した17日は、南シナ海アユギン礁(英名セカンドトーマス)への比の補給任務の途中、海警局職員が刃物で比海軍ゴムボートに穴を開け、比職員がもみ合いとなる事件が発生。その中で比海軍職員が右親指を切断、比ボートが一時拿捕(だほ)されている。またそれに先立つ15日には「不法入国容疑者」を最大60日間拘束可能とする海警法新規則が発効。「比職員が殺されたら戦争状態に入る」(マルコス大統領)との警告にかかわらず、緊張が一層激化するなか、中国が「モンスター」と呼ばれる最大級巡視船で南シナ海でプレゼンスを示し、比ににらみを効かせた格好だ。
海警5901は17日に海南島を出発、南方に進み、同日中にパグアサ、パローラ両島の領海を通過。その後、中国が人工島を造成し軍事化した「ビッグ3」の一つである、スビ礁に停泊した。20日には「ビッグ3」の中でも最大のファイアリークロス礁に寄港、さらに南下しマレーシア、ブルネイそれぞれのEEZに入った。
ファイアリークロス礁礁で補給したとみられる巡視船は、その後北上し、比が実効支配するリサール礁(英名コモドア礁)近海を通過、23日に「ビッグ3」の最後の一つで、1995年に比から実効支配を奪ったミスチーフ礁(比名パガニバン礁)に停泊。翌24日までに比が実効支配するアユギン礁(英名セカンドトーマス礁)、ラワク島(中国名・馬歓島)、パタグ島(英名フラット島)を通過した後、さらに南東に針路を変え、中国によるサンゴ破壊が問題となっているエスコダ礁(国際名サビナ礁)を通過した。その後北東に針路を取り、パラワン州エルニド町に34カイリまで接近した。
その後、針路を北西に転じ、2012年に比から実効支配を奪ったパナタグ礁(英名スカボロー礁)に到着。そこに派遣されていた海警船と合流した後、周囲を数時間巡回した後、海南島に針路を転じた。(竹下友章)