「戦争煽るつもりない」 負傷海軍兵ら80人に勲章付与
マルコス大統領が国軍西部司令部を訪問。比海軍兵らの対応を称賛し、「フィリピンは戦争を煽るつもりはない」と強調
マルコス大統領は23日、パラワン州プエルトプリンセサ市の国軍西部司令部を訪問した。大統領は演説で、17日に南シナ海アユギン礁で発生した中国海警局による比海軍の補給活動への妨害行為について「あなた方はプロフェッショナルでかつ冷静であり続け、危険な補給ミッションをやり遂げた」と海軍の兵士や幹部らを称賛した上で、「フィリピンは戦争を煽るつもりは全くない」と強調した。
大統領は演説で「そこの状況は危険で、皆さんの一人でも間違ったり、憤慨したり、頭に血が上った状態で活動すれば確実に混乱していただろう」と海警局の強硬的な臨検に対して冷静に対応した海軍兵らのプロフェッショナルな態度を讃えた。その上で、「戦争を煽ることなく、比の排他的経済水域における主権的権利を実行に移すことができ、国の海洋権益を守るための補給活動をやり遂げたことを祝福したい」と海軍兵らをねぎらった。
アユギン礁での今回の比海軍の補給活動に対する中国海警局による衝突と臨検作業を含む妨害については、ベルサミン官房長官が21日、「武力衝突とは捉えていない」「誤解に基づく偶発的な事故」と表明している。マルコス大統領も「補給ミッションをやり遂げた」と表現することで、中国による今回の妨害行為をことさら問題視しない比政府の立場を示したものとみられる。
また、大統領は国軍西部司令部で、今回の補給活動で親指を切断する負傷を負った海軍兵士と面会し、「フィリピン共和国の主権を守る任務を果たしてくれた」と感謝を示し、ラプラプ勲章を授与した。今回の補給任務に参加した他の79人の兵士らに対しても同様の勲章が送られたという。
一方、今回の補給活動への中国の妨害行為について、比国内のマカティ・ビジネス・クラブやセブ・ビジネス・クラブ、および「アジアにおける連帯に向けたインスティトゥート」などの財界団体17組織が連名で21日に共同声明を発表し、中国の攻撃的な行動を非難するとともに、比海軍や比沿岸警備隊に対する支持を表明した。
また、共同声明で財界団体らは比政府に対し「中国との紛争におけるより平和的な解決に向けたステップを取るように」と外交的対策を求めたほか、「国軍と沿岸警備隊をより近代化され、責任のある、頼ることの出来る防衛組織に変革するために必要な能力向上措置を緊急に追及するように」と促した。(澤田公伸)