「自由 二度と明け渡すな」 独立126年式典で大統領
独立記念日にマルコス大統領が「父祖が勝ち取った自由を守れ」「ラインを越えようとする者から国を守れ」と強いメッセージ
フィリピンのエミリオ・アギナルド初代大統領がカビテで独立宣言を出してから12日で126周年を迎えた。マルコス大統領は同日、マニラ市リサール公園で開かれた記念式典で「建国の父」ホセ・リサール像にブラウナー国軍参謀総長、ナクピル比国家歴史委員長と共に献花。国民に向けたメッセージで、「われの父祖が奮闘の末に勝ち取った自由を守り、脅迫、制服、抑圧の脅威に二度と屈服しないことは、国民一人ひとりの義務だ」と強調。さらに、独立記念日に大統領府で開かれる食事会では各国の外交使節と閣僚を前に、「ラインを越えようとする者からあらゆるものを防衛する」と述べ、南シナ海で中国の圧力が強まる中、強いメッセージを打ち出した。
国民に向けたメッセージで大統領は「われわれが服従の鎖を打ち破ってから1世紀と四半世紀が過ぎたが、愛国心の炎は国民一人ひとりの中に燃え盛っている。時代は違えど、領土を隅々まで防衛するわれわれの兵士は不屈の精神を持っている。われわれは圧力に屈しない」と述べ、国家の独立を守る国民の責務を強調した。
▽「ライン」越える者
朝の献花式典の後、大統領府での公式食事会では外交使節団と閣僚を前に「わたしは以前『フィリピンは屈しない』と宣言したが、多数発生している大きな試練が、よりわれわれの決意を強め、国民を団結させている」と強調。「父祖が国防のためにに戦い、命を散らしたものを守り、『ライン』を越えようとする者から全てを守る。これは、全国民の義務だ」と述べた。
その上で、比の外交政策の基本を「平和促進と国益追求に根ざす独立外交」とし、同盟国、同志国と2国間、多国間の協力を推進する決意を改めて表明した。
マルコス大統領が先月末、南シナ海で比人が殺されたら「レッドラインを越え、戦争状態に近づく」と述べ、中国軍の高官をけん制していた。
一方、アニョ国家安全保障担当大統領顧問は声明で「西フィリピン海(南シナ海で比が権益を有する海域)の防衛は最優先事項。われわれの海洋権益が尊重されるよう、2016年仲裁裁判所判断を順守し、ルールに基づく国際秩序を堅持する」と宣言した。(竹下友章)
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フィリピン独立 スペイン植民地支配末期の独立革命のリーダーの一人だったアギナルド将軍(後の初代大統領)は1897年、スペインと和平し香港に亡命。翌年5月、米西戦争中だった米海軍から独立支援の口約束を受け帰国し、6月12日に独立を宣言。比軍の協力のもと米軍はマニラを陥落し、スペイン総督を降伏させたが、米国はアギナルドとの口約束を破り、講和条約で比をスペインから買収、軍政下に置いた。翌年比米戦争が勃発。1901年にアギナルドは捕らえられ、比初の独立政府は短命に終わった。比が再び独立を回復するのは太平洋戦争後に米国から独立を認められた1946年7月4日。米国独立記念日に合わせ決められた7月4日が、1962年まで比政府の独立記念日だった。