巡視船など30隻を派遣 民間補給事業に対し中国
スカボロー礁への比民間補給作戦を前に、中国が過去最大規模となる巡視船・民兵船からなる船団を派遣
自動船舶識別装置(AIS)情報から南シナ海での中国船の動向を分析しているスタンフォード大のレイモンド・パウエル研究員(退役米空軍大佐)は13日、中国海警局の巡視船4隻と海上民兵の大型船26隻がサンバレス西沖のパタナグ礁(英名スカボロー礁)に向かっていることを明らかにした。同氏によると、30隻規模での中国船の集結は同礁付近で過去最大級。14日朝には同礁に到着する見込みだ。同礁では民間団体による補給事業が15~17日にかけて実施予定であり、その活動を妨害する目的とみられる。
パウエル氏は、中国が大規模船団を派遣した理由について、「中国は2012年に実効支配を奪った同礁で、領有権主張を断固として実行することを決意しているようだ」と分析。同礁では先月30日にも、比沿岸警備隊(PCG)、漁業水産資源局(BFAR)による比漁船への補給任務が実施された際に海警局船4隻、民兵船4隻が妨害。PCGの44メートル巡視船「BRPバガカイ」(日本供与)、BFARの漁業取締船に、「致死的水圧」(PCGタリエラ准将)で放水砲を発射し、船体を損傷させている。
今回の民間補給作戦に、PCGは44メートル級巡視船(日本供与)を派遣し、母船2隻、漁業ボート約100隻からなる民間補給船団を護送する。
▽われわれは抑止されない
中国側は過去最大規模の体制でパナタグ礁に集結しているとの情報を受け、民間補給作戦を計画する民間団体「アティン・イト」のラファエラ・ダビド共同代表は声明を発表。「中国の行為は比国民を萎縮させることはできない。それどころか、ますますわれわれは結束し、権益の保護に駆り立てられるだろう」と述べ、「われわれの作戦はあくまで平和的な活動だ。威圧によって抑止されることはない」と宣言した。
アティン・イトは、昨年12月に南シナ海の配置職員や「前線漁民」に物資補給を実行。前回はパラワン島を出発し、比較的安全と考えられるラワク島=パラワン島西約150キロ、比が実効支配=に行く予定だったが、中国海軍、海警局による追尾に遭い本隊は作戦を中断していた。
今回のパタナグ礁補給任務は、15日早朝にサンバレス州を出発。15日から17日にかけ、比の排他的経済水域(EEZ)内やパタナグ礁近海で、漁船への物資補給、ブイ設置、航行競技会などを活動を実施する予定。
アティン・イトは左派政党アクバヤンや農業労働者を支援するNGO比農村復興運動(PRRM)などが組織。今回の補給作戦にはボランティア、漁民、メディア関係者など約180人が参加する。(竹下友章)