ドゥテルテ家のつぶし方 3枚のカード
誰あろうドゥテルテ前大統領から、マルコス現大統領に対する攻撃が始まったのは、ほんの2カ月前だ。前大統領はマルコス氏を「麻薬依存症」呼ばわりしただけではなく、民衆反乱を起こすと示唆し、ミンダナオ独立を主唱した。跡継ぎである息子のセバスチャン・ドゥテルテ氏(ダバオ市長)は大統領に退任を求めた。
さらに前大統領は国軍に対し、現大統領への忠誠を考え直すよう呼びかけた。マルコス大統領は危機の芽を摘むため、防衛・安保当局高官の人事に追われた。国軍退役将官による扇動があるとのうわさが広まるなか、ブラウナー国軍参謀総長は「彼らの一部は元国軍隊員だった」と認め、「現役隊員が含まれていないことを確認し次第、速やかに行動する」と公に警告。情報筋によると、前大統領に忠誠心を持つグループによるクーデターの恐れは根強くあるという。
どうした政体であれ、こうした動きに対する対処は迅速かつ断固としたものだ。しかしマルコス氏はそうした対応からかけ離れている。それは、マルコス氏があまりに軟弱だからなのか、それとも戦略的にタイミングを見計らっているからなのか。
むろん舞台裏では様々な動きがあるようだ。ドゥテルテ政権期に任命された要人の「粛清」は進んでいるとされるし、比の同盟・同志国は比国内で中国のための世論工作を行う人物の追跡に支援を申し出ていると言われている。
マルコス氏が持つカードは3枚ある。一つは、政府与党によるドゥテルテ家のライバルへの支援だ。あるところまでくれば、地元のライバルを押さえつけるために、サラ副大統領かドゥテルテ氏のどちらかがダバオ市長選に出ざるを得なくなる。
二つめは、ラフィー・トゥルフォ上院議員のような共存できる次期大統領候補への支援だ。同氏は複数の非公開調査で次期大統領候補としてリードしていると伝えられる。
究極の切り札は、ドゥテルテ氏への逮捕状を発付しようとしている国際刑事裁判所(ICC)への協力だ。現職大統領が自身の任期中に大きなことを成し遂げる時が来ている。(12日・インクワイアラー、コラムニスト・リチャード・ヘイダリアン)