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3月6日のまにら新聞から

公船同士が衝突、職員負傷 補給任務の比船と中国船

[ 1693字|2024.3.6|社会 (society) ]

南シナ海でついに比中の巡視船同士の衝突が発生。中国の放水砲発射により比補給船に乗っていた職員が4人負傷

中国海警局船が比沿岸警備隊の巡視船(手前)と衝突する瞬間。比職員は衝撃を緩和しようと黄色の緩衝材を投げ入れている=6日午前6時33分(比沿岸警備隊が公開)

 南シナ海南沙諸島アユギン礁(英名セカンドトーマス礁)で5日、補給任務に当たる比沿岸警備隊(PCG)の巡視船と、それを危険操船で妨害していた中国海警局船との間で衝突事故が発生した。現政権になってアユギン礁を巡る緊張はエスカレートしており、これまで海警局船と比補給船、中国民兵船と比公船との衝突事故が発生していたが、今回はついに公船同士の衝突が起こった。

 また、2隻の海警局船が比補給船に向かって同時に放水砲を発射、補給船の窓ガラスが粉砕し、乗船していた比職員4人が負傷する事態も発生した。現政権になって、海警局のレーダー照射によるPCG職員の一時的な視力喪失や、民兵船が音響兵器としても使われる長距離音響装置を比漁業取締船に使用し、比職員が一時的に体調不良になる事件が起こっていたが、今回は物理的な負傷者が出た。

 PCGと比海軍は5日早朝、南シナ海南沙諸島アユギン礁を実効支配するために比が詰め所として座礁させている旧式揚陸艦(BRPシエラマドレ)への補給任務を実施。それを中国海警局船が危険操船で妨害し、その結果、同日午前6時32分、PCGの44メートル級巡視船BRPシンダガン(日本供与)と海警局の海警21555が衝突した。PCG側は、衝突によって比巡視船が若干の損傷を受けたと発表している。

 また午前8時15分には、比海軍がチャーターした補給船「ウナイザメイ4」と、その進路妨害をする海警局船が衝突する事件が発生。さらに、海警局の海警21555と海警21551が同補給船に同時に高圧放水砲を発射。補給船の窓ガラスは粉砕し、職員4人がけがを負った。午前9時36分に負傷した職員は巡視船に乗っていた職員から治療を受けた。ウナイザメイ4は、BRPシンダガンに護送されそのままパラワン島に帰投。一方、もう1隻の補給船「ウナイザメイ1」が午前9時半に座礁船に到達し、午前10時54分に補給を終えた。

 同タスクフォースは声明で「中国によるいわれのない威圧と危険操船は比人の命を危険にさらし、実際に負傷させた。こうした不法、無責任な行動は、中国政府の『緊張緩和のための平和的対話』への呼び掛けの誠実性に疑いを挟ませる」と述べて中国を非難。その上で「比は引き続き国連海洋法条約、2016年南シナ海仲裁裁判所判断を含む国際法に基づき、平和的かつ責任を持って行動する。比の排他的経済水域(EEZ)と大陸棚内の法的権利行使について、抑止されることはない」と宣言した。

 補給任務には日本が供与した44メートル級巡視船「BRPカブラ」「BRPシエラマドレ」、比海軍がチャーターした補給船「ウナイザメイ1」「ウナイザメイ4」が投入された。

 ▽「比が約束を破った」

 一方、中国海警局の甘瑜報道官は中国のSNS微博で声明を発表。「フィリピンは『約束』を破り、意図的に巡視船2隻と補給船を南シナ海南沙諸島の仁愛礁(アユギン礁)に不当に派遣した」とし、「海警局は、人道的理由から生活物資を輸送する船は『一時的な特別手配』を行っているが、こうした活動を厳しく規制している」と説明。「比沿岸警備隊船4407(BRPシンダガン)は、中国の再三の警告を無視し、海上衝突防止に関する国際規則に違反し、非専門的かつ危険な方法で、法律を執行していた中国の海警21555号に故意に体当たりした。(比船に)小さな傷が生じている可能性があるが、これについての責任は比側にある」とした。

 日本大使館も同日に声明を発表。「日本は衝突と比側に負傷者を出した危険行動に関し、改めて重大な懸念を表明する。日本は引き続き地域の平和と安定を保持するため、比を支持し、同志国への協力を続ける」とした。

 カールソン駐比米国大使も声明で「負傷者を出し、比船に損傷をもたらした中国の危険操船を強く非難する」と述べた。

 2016年の仲裁裁判所判断で、低潮高地であるアユギン礁は比本土を起点とするEEZの中にあり、海洋資源に関する主権的権利、構築物の設置に関する管轄権は比が有していることが認められている。(竹下友章)

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