85平方キロのサンゴ損壊 中国による人工島開発、密漁で
中国が南シナ海でマニラ市の2倍の面積に相当する85平方キロのサンゴを破壊したと米シンクタンクが分析
米戦略国際問題研究所(CSIS)は22日までに、南シナ海でこれまでに最低でも2万1000エーカー(約85平方キロ)のサンゴ礁が中国によって損壊されたとの推計を報告した。同面積は、首都圏マニラ市の2倍に相当する。
同研究所は衛星画像から南シナ海の約180カ所の海洋地勢を分析。少なくとも4500エーカー(約18平方キロ)のサンゴ礁が中国の人工島造成に伴う浚渫(しゅんせつ)と埋め立てによって破壊され、また中国漁船によるオオシャコガイ漁では、累計1万6300エーカー(約66平方キロ)のサンゴ礁が損傷を受けていたことを明らかにした。
CSISのグレゴリー・ポーリング上席研究員はフィリピン向けの会見で、「中国は管轄権を争う海洋地勢への構築物や『前哨基地』を軍事化するために、大規模な浚渫と埋め立てを実施している」と指摘。「現在のダメージの規模を考えると、回復するには数十年の年月が必要だ」と強調した。さらに「管轄権の所在に争いがあることが共同の海洋資源管理を妨げ、それが乱獲にもつながっている」と分析。海洋環境破壊に歯止めを掛けるためには「中国にサンゴ破壊をやめさせるのが唯一の方法であり、それ以外のいかなる取り組みにも希望はない」とした。
モニカ・サトー研究員は、中国による人工島造成に伴う浚渫・埋め立て活動は特に「2013年から2017年の間に活発に実施された」と報告。その方法はカッターでサンゴを砕いた後に沈殿物を吸引する浚渫方法によって行われているとした。2013年は、前年に中国がサンバレス州沖のパナタグ礁(スカボロー礁)を占拠したことを受け、比が国際仲裁裁判所に訴訟を提起した年と重なる。
▽開発を加速するベトナム
中国以外の沿岸国については、「浚渫をしているものの、より害の少ない方法を採用している」と説明。ベトナムが中国に次いでサンゴ礁に損害を与えた面積が大きく1500エーカー(約6平方キロ)で、マレーシア、フィリピン、台湾については、「サンゴ礁にダメージを与えた面積は100エーカー(約0.4平方キロ)に過ぎない」とした。ただ、海洋地勢の開発を加速させるベトナムについては「2023年からより破壊的なカッター・ポンプ浚渫法を採用しており、現在も行われている」と懸念を表した。
サトー研究員は、オオシャコガイの乱獲について「オオシャコガイは国際的に取引が禁止されている象牙と性質が類似することから、中国国内で需要が急増し、2012年から2015年にかけて漁が一般化した」と解説。オオシャコガイは「中国で彫像や宝石の原料として重宝され、1個当たり最低でも10万ドル(約1500万円)で取引される。オオシャコガイ漁は現在では中国当局により取り締まられているが、2019年まで継続していた」と説明した。
▽国際的圧力と包摂
海洋破壊を歯止めをかける方策としてポーリング氏は、中国を含む当事国で共同調査に向けた行動を開始するよう提言。「中国は簡単には賛同しないだろうが、これによって『なぜ中国はサンゴ礁を保護しないのか』という非難が高まり、それは中国の信用を引き下げる」とし「『地域のリーダーになりたければ、これ(海洋環境破壊)はやめなければならない』という、長期的な国際的圧力をかけることが唯一の解決策だ」とした。(竹下友章)