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12月13日のまにら新聞から

違法行為に対し緊密に連携 中国放水砲事件受け比米制服組トップ会談

[ 1557字|2023.12.13|社会 (society) ]

中国海警局による南シナ海での放水砲発射で比公船が損傷したことを受け、比米軍の制服組トップが電話会談を実施

ブラウン米統合参謀本部議長と電話会談を行うブラウナー比参謀総長=12日に比国軍が公開

 9日、10日に南シナ海の比排他的経済水域(EEZ)内で立て続けに起こった、中国海警局船が比公船に放水砲を発射し日本供与の巡視船や比の漁業取締船を損傷させた事件を受け、ブラウナー比国軍参謀総長とブラウン米統合参謀本部議長が12日、電話会談を行った。両者は「中国海警局による比の補給・巡回任務に対する違法活動が悪化している」中、緊密に連携することを確認し、「軍事的協力を増加させる方途」について意見を交換した。

 ブラウナー参謀総長の米国カウンターパートは通常、インド太平洋方面において制服組の中で最高指揮権を持つアキリーノ米インド太平洋軍司令官で、米軍制服組トップの統合参謀本部議長と電話会談を行うのは異例だ。

 会談後、米国防総省は比時間12日に声明を出し、「比米同盟への米国の関与は『鉄壁』だ」と改めて強調。その上で、全ての国に対し、「国際法が許す場所ならどこでも船舶・航空機が航行・飛行できる状態を確保するために協力すること」を求めた。

 また、2021~2023年の間に、南シナ海を含む地域で、中国の航空機による米航空機への威圧・妨害行為が180回以上記録されていると発表。ここ2年の妨害行為がそれ以前の10年間の妨害より多いとし、中国が米国に対しても上空飛行の自由の妨害を強めている点を強調した。

 それに先立ち米国務省も比時間11日に声明を発表。「中国船は放水砲の発射および衝突を発生させた危険操船を通じ、比船を損傷させ、比職員を危険にさらしただけでなく、長距離音響装置を使用し、比職員数人を一時任務遂行不能の状態にした」と比側と同じ認識を提示。その上で中国に対し、2016年の南シナ海仲裁裁判判断に従うよう要求するとともに、「比国軍、比沿岸警備隊船を含む公船、航空機に対する『武力攻撃』に対し、比米相互防衛条約は発動する」とけん制した。

 ▽グレーゾーンの拡大

 国軍は11日、南シナ海南沙諸島アユギン礁(英名セカンドトーマス礁)への補給船にブラウナー参謀総長が乗船していたことを公表。ブラウナー氏は現役の参謀総長として初めて、同礁で海軍が詰め所とする座礁艦BRPシエラマドレに乗り込み、配置職員を慰労した。しかし比政府によると、その直前には、参謀総長が乗り込んだ比チャーター補給船「ウナイザメイ1」が、海警局や民兵船に衝突されダメージを受けたほか、放水砲も発射されていた。

 中国による「グレーゾーンの力の行使」を最前線で体験した同参謀総長は12日、テレビ番組に出演。「今回エスカレートした中国の行動は武力攻撃に当たるか」との質問に、「放水法発射は武力攻撃に当たらず、今回の事件ではまだ比米相互防衛条約は発動しない」との認識を示した。

 10月のアユギン礁への補給任務の際、中国船が危険操船を行った結果、海警局船と比補給船、中国の「海上民兵」船とPCG巡視船がそれぞれ衝突して以来、中国による威嚇・妨害は比船に物理的損害を与えるところまでエスカレートしている。9日は海警局大型巡視船の高圧放水砲直撃によって漁業取締船のレーダーが陥没し、10日は日本供与の44メートル旧巡視船のマストと、補給船のエンジンが放水砲によってそれぞれ損傷した。

 放水砲で比公船を破損させることも武力攻撃に当たらない「グレーゾーン」の範囲内ということになれば、今後中国は米国による反撃の恐れなく比の補給任務の度に高圧放水砲で比船を損傷し続けることが可能となり、南シナ海で中国を押し返すことを試みる比は、一気に劣勢に立たされる。

 今回の事件を受け、国家安全保障会議のマラヤ事務局長補は「既に安全保障戦略の改訂案を作成した」と発表。「今月中にも大統領に説明し、承認を求めたい」としている。(竹下友章)

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