「復興への寄り添いに返せぬ恩義」 台風ヨランダ襲来10周年 マルコス大統領
6千人以上の命を奪ったスーパー台風ヨランダ来襲から10周年。大統領は救援・復興支援に当たった全ての国・団体に感謝を表明し、災害に対する強靭化への取り組みを約束した
比で少なくとも6千人以上の命を奪い、「観測史上類を見ないほど猛烈」と形容されたスーパー台風ヨランダ(アジア名ハイエン)の比上陸から8日で10年目を迎えた。レイテ州タクロバン市では同日、追悼式典が開催された。式にはマルコス大統領、ロムアルデス下院議長、アバロス内務自治相、ロイザガ環境天然資源相に加え、日本など救難・復興を支援した諸外国の代表が参加した。
スピーチで大統領は「ヨランダ来襲後の数日間、どのように救援物資を調達し、必要としている人たちの元に届けるのか、われわれは完全に途方に暮れていた。私が最初にタクロバンに到着したとき、レイテ島全体で動いている車両は3台のみだった」と回想。「そうした中、諸外国、NGO、民間企業ができる限りの支援をしてくれ、救援物資、水、浄水器、燃料、移動手段など必要なものは全て持ってきてくれた、われわれはそれなしでは生きることはできなかった」とし、支援に駆けつけた全ての国・人・団体に謝意を表明。
「ヨランダ襲来直後、そしてその後何年にもわたり、われわれが立ち直るまでそばにいてくれたことが、どれほど大切だったか」と強調し「何年もわれわれに寄り添ってくれたことに対し、とても返せないほどの恩義を感じている」と述べた。
比の被害について「6千人以上の命が失われ、2万8千人以上が負傷し、千人以上が行方不明となった」と振り返り、その上で「今日に至るまで、本当の被害規模を把握できていない。記録にすら残らなかった犠牲者もいる。かれらの存在を心に刻まねばならない」と訴えた。
また台風襲来時、マニラ天文台の国際諮問委員長を務めていたロイザガ現環境天然資源相が、「ヨランダの猛烈さを最初に予測した1人だった」と紹介。「時速370キロの突風という数字は前例がなく、当初信じられなかった。だが今となっては、気候変動の最初の影響だと認識している」とした。
その上で、気候変動対策について「優先国家政策課題とし、気候変動に関する知識を、計画・決定・取り組みに生かし、より強く、より強靭(きょうじん)な地域社会を築いていかねばならない」と強調。「大規模な悲劇を回避し、それに適応できるよう政府は常に努力している」と請け負った。
ヨランダ上陸から3日後の11月11日、日本は国際緊急援助・医療チームを派遣。12日には陸海空自衛隊の医療部隊を主体とした国際緊急援助隊が派遣されたほか、17日には「フィリピン国際緊急援助統合任務部隊」を編成。当時自衛隊海外派遣史上最大の1170人の自衛隊員が海自の護衛艦「いせ」(197メートル)、陸自の大型輸送ヘリCH47チヌーク、空自の戦術輸送機C130ハーキュリーなど全16航空機3艦船で災害救援に当たった。
日本はまた、計51億1000万円の緊急支援、500億円の災害復旧スタンドバイ借款を提供したほか、2014年には国際協力機構(JICA)による開発計画調査型技術協力「台風ヨランダ災害緊急復旧・復興支援プロジェクト」(無償)が始動。行政庁舎、学校、気象台、地域保健所、医療センター、電機組合施設の復旧や電力復旧機材、空港機材の供与などを行った。(竹下友章)