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9月23日のまにら新聞から

仲裁裁判所に再提訴へ サンゴ大量損失問題で

[ 807字|2023.9.23|社会 (society) ]

南シナ海の「環境破壊」で比が再度中国を仲裁裁判所に提訴する方針と司法相

 フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にある南シナ海南沙諸島のロズル礁(英名イロコス礁)周辺でサンゴの大量喪失が確認されたことを受け、レムリヤ司法相はこのほど、南シナ海における環境破壊を訴因として中国を常設仲裁裁判所に提訴する方針であることを明らかにした。提訴されれば、2016年に中国の主張を全面的に退けた仲裁裁判に続き2回目となる。ロズル礁周辺には海上民兵を兼務するとみられる中国漁船の集結が確認されている。21日の英字紙マニラタイムズが報じた。

 同法相は「昨今の主権に関する問題でなく、環境破壊に関する訴訟だ」とした上で、「われわれは既に多くの証拠をつかんでおり、現在ベルサミン官房長官と協議を行っている」と述べた。ゲバラ訟務長官も再度仲裁裁判所に提訴する計画があることを認めた。

 比沿岸警備隊(PCG)は、ロズル礁とその南東90キロにあるエスコダ礁(サビナ礁)の海底調査結果として、「海底には生命がなく、見つかったサンゴの残骸は処理後に投棄されたものである可能性がある」と報告。PCGのタリエラ報道官は「ロズル、エスコダ両礁における中国民兵の違法で破壊的な漁業活動の継続が海洋環境の劣化と破壊を直接引き起こした可能性がある」と指摘している。

 これに対し、比シンクタンク「アジア世紀比戦略研究所」のラウレル所長は、「国軍やPCGでさえ単なる疑惑といっているのに、どうして裁判ができるのか」と批判。南シナ海のサンゴ破壊は数十年前に行われていたダイナマイトやシアン化物を使用した違法漁や、気候変動による海水温上昇、海洋酸性化によるものとの見方を示した。

 フィリピン大海洋科学研究所のデオ・オンダ博士によると、中国による南シナ海の岩礁埋め立て・人工島建設により、パナタグ礁(英名スカボロー礁)周辺と南沙諸島の岩礁生態系がダメージを受け、比の被害額は年間推計約331億ペソになるという。(竹下友章)

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