「私たちは拉致された」 失踪の女性2人、家族の下へ
行方不明だった活動家女性2人解放される。政府は「投降していた」2人は「拉致された」
マニラ湾埋立事業などに反対していた環境活動家の女性2人がバタアン州オリオン町内で武装した男たちに拉致されていた事件で、政府から2人が解放されたことが20日、明らかとなった。行方不明となっていたジョニラ・カストロさん(21)とジェド・タマノさん(22)は、同日時点で人権委員会の保護下に置かれているとされるが、詳細は明らかにされていない。
テレビ局CNNフィリピンによると、カストロさんは「私たちは埋め立てを阻止し、マニラ湾の漁民の権利を守るため、闘い続けなければならない」との思いを口にしているという。
国家安全保障会議(NSC)のジョナサン・マラヤ事務局長補佐は20日、テレビ局ANCに出演し、「彼らが新人民軍(NPA)であることは明らかで、彼ら自身が宣誓供述書で認めている」とし「すべてはじきに明らかになる」と述べた。
今月2日から行方が分からなくなっていた2人の家族や環境・人権団体など関係者は、事件発生以降、懸命な捜索や呼び掛けを行ってきたが、同町の国家警察をはじめ、政府機関の非協力的な態度を訴えていた。
そうした中、国家安全保障会議や共産主義勢力との武力紛争を終わらせる国家タスクフォース(NTF―ELCAC)は15日に記者会見を行い、「2人が左派系の活動から身を引くため、自発的に治安当局に投降した」とし「安全な場所で保護されている」と公表していた。
▽「命を脅かされた」
そして今月19日にはブラカン州プラリデル町役場で、NTF―ELCAC監視の下、2人を伴った記者会見が開かれた。2人は会見の場で国軍が強調する「投降」を翻す証言を行い、「何が真実かというと、私たちは国軍に拉致され、強制的にバンに乗せられ、命を脅かされた」と明言。同席していた第70歩兵大隊のロネル・デラクルス中佐ら政府関係者は、異口同音に国軍の手続きに問題はなかったとし、自己弁護に終始した。
同町役場のフェイスブックなどで流された約20分に及ぶ会見の模様は、直後に削除された。
NTF―ELCACは同日の声明で、「2人が治安部隊に拉致されたとする左派団体の宣伝文句をおうむ返しするような不運な会見となり、がく然とすると共に深い悲しみを覚えた。私たちは裏切られた」と伝えた。また「彼らの突然の心変わりの原因が何なのかは分からない。宣誓供述書の信ぴょう性と真実性について、われわれが事前に2人と交わしたやり取りは、十分な説得力をもつものだった」とした上で、「われわれは騙されたのだ」と憤った。
▽プロパガンダ動画か
NTF―ELCACは事前に2人の行動履歴などとともに。2人が「共産主義グループ」に関わり、国軍に「保護」され、何らかの書類に「署名」を行い、NTF―ELCACを前に喜びの涙を流しているかのような6分ほどの映像を投稿。ただ、不自然なカットが多く、信ぴょう性が疑わしい内容となっている。(岡田薫)