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9月19日のまにら新聞から

北スリガオ州を追加候補に 地元下院議員らが「売り込み」

[ 1205字|2023.9.19|社会 (society) ]

バーバース下院議員が地元の北スリガオ州にEDCAに基づく米軍利用施設を追加設置するよう「売り込み」

 比米防衛協力強化協定(EDCA)に基づき米軍が比国内で利用可能な軍事施設をさらに増設することを検討していると米インド太平洋軍のトップ、ジョン・アキリーノ司令官が14日に明らかにしたのを受け、ロバートエース・バーバース下院議員=北スリガオ州=と兄のリンドン・バーバース同州知事が16日、「巨大な米海軍艦船が寄港できる深い海に囲まれており適地だ」として、同協定に基づく追加の米軍施設を同州に設置するよう誘致する声明を発表した。北スリガオ州にはサーフィンのメッカとして世界的に知られるシャルガオ島が北端に位置する。17日付け英字紙インクワイアラーが報じた。

 2014年に締結された比米防衛協力強化協定を巡っては、16年に米軍が利用できる軍事施設がバサ空軍基地(パンパンガ州)とフォートマグサイサイ国軍基地(ヌエバエシハ州)、ルンビア空軍基地(カガヤンデオロ市)とアントニオバウティスタ空軍基地(パラワン州)、およびマクタン・ベニートエブエン空軍基地(セブ州)の5カ所に置かれた。その後、台湾有事の可能性や南シナ海における中国の海洋進出強化を受けて米軍当局が昨年ハワイで開催された両軍会合でEDCA利用基地の増強を要望、今年4月に台湾近くのカガヤン州ラルロ空軍基地など新たに4カ所の追加が発表されたばかり。

 バーバース下院議員らは声明で、北スリガオ州が西フィリピン海(南シナ海南沙諸島)と太平洋を短距離で結ぶスリガオ海峡という要衝にあり、巨大艦船も寄港できる深い海に囲まれているほか、台湾と西フィリピン海からそれぞれ1200キロ~1400キロ超の距離であり、基地が設置されれば、いずれにも睨みをきかせることが出来ると地理的な優位性を強調している。

 また、同議員らは、同州に米軍基地が設置されれば、周辺地域の経済発展に貢献するほか、ミンダナオ東部やビサヤ地域東部という台風などによる自然災害が頻発する地域にとって比米両軍による災害救援活動も迅速に行われるようになるとして、地元住民にとって大いに歓迎されると期待感を示している。

 北スリガオ州は2021年12月に台風オデットの直撃を受け、州民38人が死亡したほか、ミンダナオ北東地域だけでも71人が死亡するなど壊滅的な被害を受けている。

 ▽受け入れ自治体も揺れ動き

 EDCA施設の増強については、今年4月に台湾に近いカガヤン州の国軍基地が候補と発表された際、黄渓連在比中国大使が「フィリピンが(台湾で働く)OFW15万人のことを本当に考えているのなら、米国に台湾海峡近くの軍事施設へのアクセスを提供して火に油を注ぐのではなく『台湾独立』に明確な反対を唱えることを勧める」と発言するなど批判を強めたほか、マンダ・カガヤン州知事も一時、米軍による州内の施設利用に消極的な姿勢を示すなど、受け入れる自治体側の姿勢にも揺れ動きがみられる。(澤田公伸)

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