「一日も早くふるさとに」 未帰還の御霊に思いはせる
カリラヤ日本人戦没者慰霊園で終戦記念日の慰霊祭が行われ、約250人が参列
ラグナ州カビンティ町のカリラヤ日本人戦没者慰霊園で15日午前、戦後78年の日本人戦没者慰霊祭が行われた。今年、同園の「比島戦没者の碑」は建立50周年を迎える。越川和彦駐比日本国大使や花田貴裕公使兼総領事をはじめ、マニラ日本人会やマニラ日本人学校など邦人団体や個人を合わせ、約245人が参列。快晴の下、参列者全員が花を手向け、戦没者に黙とうを捧げた。
式では岸田文雄首相からのメッセージを越川大使が、マルコス大統領からのメッセージを花田公使が代読。マニラ日本人会の高野誠司会長が追悼の辞を述べた。
岸田首相は慰霊碑の竣工式に出席した故フェルディナンド・マルコス大統領の「この碑を日比両国が尊敬しあう、永遠のシンボルとしたい」との発言に触れ、2国間で育んできた友好関係と平和を祈るとし、両国の戦没者を悼んだ。マルコス大統領は、先の大戦における「同胞の勇敢なる足跡」は「永久に記憶に刻まれねばならない」とした上で、日本は国づくりにおける「確固たるパートナー」だとし、「日本とともにあり続ける考え」であることを宣言した。
閉会の辞で越川大使は、日本と米比間の戦闘に巻き込まれたすべての戦没者とその家族の悲しみを「日本人は、決して忘れてはならない」「記憶を風化させず次世代に継承することが私たちの責務」とし、追悼の意を表した。また、「再び祖国の地を踏むことができなかった同胞の方々の無念さ」に言及し、遺骨収集事業も「一日も早くふるさとにお迎えできるよう、国の責務として全力を尽くす」と述べた。
▽望まぬ「新たな戦前」
式では、マニラ日本人会の男声合唱団「マニラグリークラブ」と女声合唱団「ラ・メール」が日比両国の国歌を斉唱。献花式では「ふるさと」「椰子(やし)の実」のほか東日本大震災の復興支援ソング「花は咲く」などの歌を添えた。
マニラグリークラブの岡本浩志さんは「今年もカリラヤの地で多くの日本人の参列者とともに、戦争を記憶し式を迎えられたことをうれしく思う」と話した。
また、「戦没者含め、望郷の思いを持つ人々に思いをはせて歌った。献花に添えるにあたり、より歌詞が届けば」との理由で、和声でなく同じ旋律を歌う斉唱の形をとり、あえて男女混声合唱にはしなかったという。
同クラブ団長の小坂元一さんは「外国の地で歌えるのは平和なこと」だとし、「メディアをはじめ意図的に恐怖をあおる人もいる中で冷静さを保つのは難しいが、新たな戦前がこないことを望むばかりだ」と気持ちを込めた。(深田莉映)