「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

マニラ
30度-24度
両替レート
1万円=P3,820
$100=P5885

6月1日のまにら新聞から

トップに聞く 世界のあらゆるものを綺麗に ジュンカ・樋口満夫統括マネジャー

[ 2365字|2023.6.1|社会 (society) ]

ジュンカホールディングスの樋口満夫統括マネージャーに話を聞いた

ジュンカホールディングスの樋口満夫統括マネジャー=19日、首都圏マカティ市で沼田康平撮影

 市場調査やコンサルティングを行う矢野経済研究所のウェブサイトによると、2021年以前の過去5年間における日本国内の理美容市場は20年を除き、2兆1000億円前後を推移する。人口増加が50年まで続き、中上位所得層の拡大も期待されるフィリピンの理美容市場ではどこまで大きくなるのだろうか、計り知れない。ここ比で活動するジュンカホールディングスは美容をはじめ、人材派遣や金融などさまざまな事業を展開している。同社の比事業を取り締まる樋口満夫統括マネジャー(56)に話を聞いた。(聞き手は沼田康平)

 ―事業内容は。

 部門としては総合美容サービスを提供している。老若男女問わず、ヘアーやネイル、マッサージ、着付け、アイラッシュ、脱毛など人を綺麗にすることがメイン。ジュンカホールディングスとしては、美容学校設立や人材派遣、金融、フランチャイズカフェなどの事業を展開している。ジュンカ(純化)というコンセプトに基づきあらゆるものを綺麗にすることを目標にしている。

 ―来比のきっかけ。

 日本で美容サロンを営んでいた15年前、比でヘアーサロンを起業する知人から声がかかり、来比を決意。その2年後に発生したリーマンショックを機に、独立しても採算が取れると見込んで、比で起業した。5年前にジュンカホールディングスと合併し現在に至る。

 ―比の印象は。

 ほこりまみれで暑く、人も多く異様な活気に驚かされた。当時は警戒しながら生活していたが、今ではすっかり慣れた。気候が安定しており、日本の寒暖差にはもう耐えられない。

 ―比市場の魅力は。

 われわれが心配になるほどの購買意欲。給料を受け取った直後に使いたくてしょうがない気性というか、すぐ使い果たす国民性。

 ―現在の目標は。

 美容部門として技術教育技能開発機構(TESDA)と連携し、首都圏ケソン市及びマカティ市で美容学校の設立を目指している。すでに同機構上層部とは話もついており、契約も済んでいる。

TESDA認定の修了証明書が発行されれば、スキルとして認識される。国内の就職だけでなく、海外比人就労者(OFW)として海外で働く際も有利になる。

 人材派遣部門としては比人を日本へ派遣し、単純労働や家政婦、看護・介護労働者として働きたい比人を日本に派遣できるよう、人材派遣業として比経済特区庁(PEZA)へ営業許可を申請中。

 金融部門では暗号資産を活用した海外送金や暗号資産の両替または銘柄の買い替えプログラミングを申請している。暗号資産のジュンカコインも2020年から流通しており、日本を含むアジアやヨーロッパで取り引きができる。もともと海外送金における手数料の高さや上限制約などを解決するために作られた。

 山あり谷ありだが、なんとか軌道に乗せて飛躍させていきたい。

  ―暗号資産市場について。

 今後、現金はなくなるといわれており、今も現金を持ち歩かず、主にクレジットカードや電子マネーを利用している人は増加傾向にある。デジタル化されたお金を使っていくその先にはオンライン上でお金の流れが完結する社会が来る。その一端を暗号資産が担えたらと考えている。

 一方、 引き続き現金を使う世代もいて二分化するが、その世代の人口も後々減っていき、最終的にはデジタル貨幣や暗号資産だけを使う世代が残ると予想している。

 ―コロナ禍は。

 やはり事業縮小に追い込まれた。コロナ禍前の4店舗から1店舗へ縮小。加えて政府のワクチン政策に従わなければならず、ワクチン未接種のお客様にはサービスを提供できず、遠慮してもらうことが辛かった。

 ―尊敬する経営者は。

 スターバックスコーヒージャパンの岩田松雄元最高経営責任者(CEO)。コカ・コーラで役員になり、業績を回復させたり、プリクラを導入した、実力で成り上がった人物。

 例えば、岩田氏はスターバックスの店舗を自ら訪れ、店長やマネジャーと話すのではなく、実際に客と接している従業員から話を聞き、彼らの話に基づいて悩みや問題をすぐさま改善している。岩田氏の言葉を借りると、「(従業員に対して)あなたが良いと思ったことはやりなさい」を実践し、現場の意見を大切にして、従業員がやりがいを持てるようにしている。

 ―経営上の信条は。

 バランスを大切にして、接客や売上、経費、従業員の教育など総合的に目配りしている。

 ―社員にとってどんな存在でありたいか。

 仕事中は怖い存在でありたい。比ではドアを開けたら開けっ放し、物を使っても元の場所に戻さないなど躾(しつけ)がされていない部分も多く、接客商売では大きな課題であり、マナーの教育が大切。

 また休み時間やプライベートの雰囲気のまま仕事をしないようメリハリをつけさせ、仕事時間を引き締める存在が必要だ。

 ―社内での言語は。

 コミュニケーションはフィリピン語がメイン。日本人の英語は理解されにくく、フィリピン語のほうが通じやすかった。フィリピン語・英語・日本語の辞書を片手に日本にいたころから勉強していた。フィリピン語を話すと従業員が親近感を持ってくれて、英語よりも壁を感じなかった。

 ―社員との関係で気にかけていることは。

 距離感。近すぎるとお金の相談をされたり、また派閥問題に巻き込まれる。遠すぎると何を考えているか分からない。これも経営と同じくバランスが大事。

 ひぐち・みつお 1966年6月生まれ。北海道出身。日本で美容サロンを16年間経営した後、2007年に来比。美容サロン「ヒグチヘアーサロン」を起業し、現在はジュンカホールディングスと合併し比事業を統括する。

社会 (society)