比中ライン増設で合意 中国大使問題発言は「手打ち」 秦外相の初訪比
中国秦外相が就任後初訪比。大統領との会談で南シナ海問題を巡る黄大使の「脅し発言」については「手打ち」か
昨年12月の外相就任後初めて比を訪れた中国の秦剛外相兼国務委員は22日、マナロ外相、マルコス大統領と相次いで会談した。両会談には黄渓連在比中国大使も同席した。大統領府で開かれた会談の後、マルコス大統領は1月の訪中時に設置が決まっていた比中間コミュニケーションラインを、南シナ海で発生した事象を両国が即時解決できるよう増設することで合意したことを明らかにした。
黄大使は14日、NGO「比中理解協会」の主催する第8回マニラフォーラムで「約15万人の(在台湾)海外比人就労者(OFW)を本当に大切に思うなら、台湾海峡近くの基地へのアクセスを米国に提供することで火に油を注ぐのでなく、台湾独立に明確に反対することが比には忠告される」と発言。それが「OFWを人質に取った脅迫だ」としてメディアや国会議員に取り上げられ大きな問題となっており、19日にはマルコス大統領も「大使に直接真意を確認する」と述べていた。
今回の会談後大統領は「両国やその他の国々による最近の声明の一部には、誤解されかねないものがあり、今日秦外相と話せたことは非常に有益だ。互いに直接対話し、問題を解決することができる」とし、その上で「大変生産的な会談だった。経済だけでなく、文化、教育、その他の交流についての計画を議論した」と報告。比政府側のどの発言が誤解を招く恐れがあるのかについては具体的な説明がなかったが、黄大使発言問題は今回の会談で「手打ち」となったもようだ。
▽投資「徐々に実現」
それに先立ち秦外相は、首都圏マニラ市のダイヤモンドホテルで午前、マナロ外相と対面としては初となる外相会談を行った。
外相会談ではマナロ外相が1月のマルコス大統領訪中時に中国側が約束した228億ドルの企業間投資約束が「少しずつ実現している」と歓迎の意を表明。
同外相は「西フィリピン海(南シナ海)に関する相違は両国関係の全てを表すわけではないということで合意している」ことを確認する一方、「農業、インフラ開発、エネルギー、科学技術分野を「2国間経済関係の重要要素」とし、観光業の復興、航空便の再開、留学生・教員・労働者の相互受け入れなど「両国の人的な結びつきを一層強化する」と述べて強調し、中国が対比経済協力計画を実行に移すことに期待を表明した。
秦外相は「動きの激しい国内・地域情勢の中、健全で安定的な比中関係は両国民の希望をかなえるだけでなく、地域諸国の共通の望みにも沿う」とし「両国は共通の伝統と友好関係を継続し、相互利益を深め、相違点を信頼に基づく協議と対話を通じ適切に解決する必要がある」と述べた。(竹下友章)