ICC上訴「まだ係争中」 捜査中止申請棄却で訟務長官
訟務長官「ICCは捜査中止を認めなかっただけ。上訴自体の棄却ではない」
ゲバラ訟務長官は29日、国際刑事裁判所(ICC)の上訴裁判部が27日付で比政府の捜査中止を求める申し立てを退ける判断を下したことについて、「上訴中における捜査手続きの一時中止効果が認められなかっただけで、上訴自体はまだ係争中だ」と説明した。「今後ICCとは一切のコミュニケーションを取らない」と宣言したマルコス大統領にも、現状を説明する文書を送付したことを明らかにした。
ABS―CBNニュースなどによると、同長官は大統領の「断交宣言」について「ICCは比政府に対し一切事前通知することなくウェブサイト上に判断を掲載したため、大統領は比政府の上訴内容全てが棄却されたとの印象を抱いたのだろう」と説明した。
ゲバラ長官はドゥテルテ前政権で司法相を務めており、前政権の麻薬撲滅政策に伴う超法規的殺害へのICC捜査に対しては「比の法制度全体への告訴であり、独立法治国家としての比の主権を侵害する」として、捜査に協力する「法的・道義的責務がない」と主張している。
政府公式統計によると、前政権期の麻薬捜査中の容疑者殺害数は6252人。ただし、ドゥテルテ氏のダバオ市長時代の「ダバオデススクワッド」(ダバオ処刑団)による超法規的殺害も含めると、人権団体らは1万2000人~3万人の命が奪われたと推計している。
▽現政権でも続く殺害
国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルは27日の声明で「昨年324人が麻薬捜査関連で殺害されており、うち175人はマルコス政権下での犠牲者だった」と報告。「麻薬戦争下での不法な殺害と不処罰の文化はなお継続している」と訴えた。
フィリピン人権国際連合(ICHRP)は、国内司法システムがこうした状況を精査し、外部の捜査を受け入れる状況を比政府が確保するまで、米国による比への安保協力を停止する法案を通過させるよう米議会に訴えた。
米下院のスーザン・ワイルド議員は米時間3月7日付で、下院に比政府が人権侵害の加害者の責任追及を確実に行うまで米政府による比国軍・警察への援助を一切停止する米下院法案第1433号(フィリピン人権法案)を提出している。(竹下友章)