「日刊まにら新聞」ウェブ

1992年にマニラで創刊した「日刊まにら新聞」のウェブサイトです。フィリピン発のニュースを毎日配信しています。

マニラ
33度-25度
両替レート
1万円=P3,780
$100=P5880

3月13日のまにら新聞から

「封じ込めの意図明らか」 EDCA米軍利用施設増設に 駐比中国大使

[ 1275字|2023.3.13|社会 (society) ]

黄中国大使はEDCA施設増設に関する米国大使の発言に反論の声明を発表

 2月に4施設追加することが決まった比米防衛能力強化協定(EDCA)に基づく米軍利用施設の建設候補地とされるルソン地方北部カガヤン、イサベラ両州知事が懸念を表明している問題で、マリーケイ・カールソン駐比米国大使は11日に放送された民法大手GMAの独占インタビューで、「EDCA施設は両州の防衛力を強化させるだけでなく、経済を成長させる」と説明した。再開が予定されている比米合同哨戒について「水路を自由で開かれた状態に保つために重要な要素だ」とコメント。これに対し、黄渓連駐比中国大使は12日、「米国の中国封じ込めの意図は明らか」などと反論する声明を出した。

 黄大使は「米国がEDCA基地を増設し部隊を派遣することで比との軍事協力をアップグレードしようとするのは、覇権と自分本位の地政学的利益を維持するためであり、冷戦期の精神性からだ。米国はこのような軍事協力を『災害救援目的』と言い、複数の米国関係者は『地方経済振興の動力となる』と押し売りさえしている」と批判。

 その上で、「これらの動きが米国による中国包囲・封じ込めの企ての一部であることは明らか」と断定。「地政学的闘争の戦車の一団に取り込まれることは、比の国益に深刻な害を与え、地域の平和と安定を危険にさらす」と警告した。

▽ガキ大将を招く必要なし

 黄大使は、南シナ海問題について「航行の自由に異論はない」としながら、「ただ、米国が『自由で開かれた航路』と言うとき、米国の念頭にあるのは『米軍艦が南シナ海で暴れまわる自由』だ」と指摘。「米軍は太平洋の反対側からわざわざやってきて、別地域の同盟国とつるみ、南シナ海にトラブルを巻き起こす。こうした行動を通じ、米国は地域の緊張を高めてきただけでなく、平和と安定を守ろうとする地域共同の努力をもかき乱している」と批判した。

 また、「中国と比国は、『火を焚き付け両国の間にくさびを打ち込もうとしている勢力』に流されるより、よい隣人関係を保ち、共通の利益を得るべきだ」とし「ましてガキ大将を地域に招くことはない」と釘をさした。

 さらに黄大使は「EDCA施設増設に懸念を表明しているのは、カガヤン、イサベラ両州知事だけでなく、ドゥテルテ前大統領もテレビインタビューで、上院外交委員会の公聴会では上院議員、地方自治体職員、法律専門家らが懸念を表明した。シンクタンクや学者、NGOも反対の声を上げている」と比国内の慎重論を列挙。

 「先見の明のある比国民の疑問」として①台湾に近いイサベラ、カガヤン両州に新たな施設を設置するのか②新EDCA施設は本当に災害救援を目的としたものなのか③台湾問題へ介入しようとする米国に巻き込まれることが、本当に比の国益となるのか――という3点を挙げた。

 カガヤン州のマンバ知事はEDCA施設増設決定発表後に「外国軍や外国基地は各攻撃の磁石となる。自国民のためなら戦って死ぬこともいとわないが、なぜ外国の戦争のために死ななくてはならないのか」と、施設設置を容認しない姿勢を示していた。(竹下友章)

社会 (society)