「正義が勝利した」 脱税裁判でレッサ氏に無罪判決
脱税で訴追されたラップラーの最高経営責任者マリア・レッサ氏に対し無罪判決
ネットニュースサイト「ラップラー」の最高経営責任者で、2021年ノーベル平和賞受賞者であるマリア・レッサ氏が脱税の罪に問われた裁判で、税控訴裁判所(第1支部)は18日、無罪判決を下した。判決後、レッサ氏は裁判所の前で記者団のインタビューに答え、「今日、事実が勝ち、真実が勝ち、そして正義が勝った」と涙ながらに喜びを表した。
レッサ氏とラップラーは、ドゥテルテ前政権下の2018年3月、外資系メディアからの出資に対しフィリピン預託証券を発行した際にその収入に課税される所得税や付加価値税の計1億4100万ペソを脱税したなどとして、4件の脱税容疑で司法省によって訴追されていた。同氏とラップラー側は預託証券発行は増資にあたり、課税所得に当たらないとして全面的に争っていた。
同裁判所は判決で、裁判官3人全員がラップラー側の主張を認め、「訴追側が合理的な疑いを超えて彼らを有罪にすべき証拠を提出できなかった」として訴えを却下した。
レッサ氏は裁判所でのインタビューで、「ラップラーに対する訴追は政治的な動機に基づいており、権力の乱用があったことが証明された」と述べた。また同氏は、ドゥテルテ政権下で麻薬密売容疑などで起訴され国家警察本部に拘置されているレイラ・デリマ前上院議員と、レイテ島の独立系メディアの女性記者で2020年に銃器不法所持で逮捕されたフレンチマエ・クンピオさんの名前にも言及し、前政権から同様に迫害された政治家やジャーナリストに思いを馳せていた。
レッサ氏とラップラーはドゥテルテ氏やその陣営が2016年の大統領選の選挙キャンペーンでネット工作部隊を雇ってSNSなどを通じて情報操作していた疑惑やドゥテルテ政権下で進められた強権的な麻薬撲滅戦争に伴う超法規的殺人などの問題を調査報道の形式で報道し続けた。そのためドゥテルテ政権やその関係者らから脱税やサイバー名誉棄損罪などで訴えられてきた。脱税容疑は今回却下されたものの、レッサ氏と同社のレイナルド・サントス元記者に対するサイバー名誉棄損罪では昨年7月に控訴裁判所で有罪判決を受けており、最高裁に上告している。(澤田公伸)