幹部300人に辞表提出要求 警察内部浄化に「踏み絵」
内務自治相が警視以上の警察幹部全員に辞表提出を要求。違法薬物への関与を調査
国家警察(PNP)を管轄する内務自治省のアバロス大臣は4日、アズリン国家警察長官含む、警視以上の幹部(約300人)に対し、辞表提出を求めた。新設される委員会が辞表を提出した幹部職員を審査し、審査中は職務を継続。審査の結果、麻薬取引に関与した可能性があるとみなされた職員の辞表はそのまま受理される。
アバロス大臣は「これは命令ではない」としつつ、「麻薬取引に関与していなければそのまま勤務を継続でき、問題ない。辞表提出を固辞する職員は疑わしい」と述べた。警察内部の麻薬汚染に取り組む姿勢を示すため警察幹部らに「踏み絵」を迫った格好だ。
同大臣は突然辞表提出を要求した理由について「警察幹部までもが麻薬取引に関与し、麻薬問題が警察内部に深く浸透していると思われる中、警察内部の麻薬問題に対処するための最速の方法だからだ」と説明。「麻薬関与容疑のある職員に対し訴訟を起こし有罪判決を勝ち取るという長い司法プロセスより、はるかに短くて済む」と処置の迅速性を強調した。合法性については「1992年に前例がある」とした。
一方、麻薬取引関与の可能性があるとして辞表が受理された幹部職員に対し、警察が捜査するかどうかについては言及がなかった。刑事訴追するには証拠が不十分な職員を含め、疑いのある幹部職員に対し辞職という退路を与えたという側面もありそうだ。
新設される委員会について同大臣は「5人の委員から構成され、自分は入らない」とだけ述べ、誰が委員になるかは明らかにしなかった。
▽警察内部の麻薬汚染
アバロス大臣はまた、押収麻薬を隠れて転売する「ニンジャ警官」問題にも触れ、「元国家警察長官・デラロサ上院議員が『ニンジャ警官がまだいる』と言っていたが、私もそう思う」と認めた。
ドゥテルテ前大統領も昨年4月、「就任当初にデラロサ(元警察長官)と一緒にマニラに乗り込んだとき、記録を見て驚いた。6人の国家警察幹部が麻薬で遊んでいたではないか」と警察内部への麻薬の浸透に言及した。
昨年10月には覚醒剤約990キロ(67億ペソ相当)の保管・取引に関与した疑いで、国家警察麻薬取締班所属のロドルフォ・マヨ4級巡査部長が逮捕された。アズリン国家警察長官は12月、同4級巡査部長について「捜査中であるにもかかわらず、ある警察幹部によって麻薬取締班に復帰した」と明らかにし、懸念を表明している。(竹下友章)