司法相の長男麻薬所持で逮捕 辞職要求高まるも大統領は擁護
司法相の長男が130万ペソ相当の麻薬密輸で逮捕。辞職要求噴出も大統領は擁護
大統領府麻薬取締局(PDEA)は13日、ジーザス・レムリヤ司法相の長男を130万ペソ相当の大麻を密輸した疑いで逮捕したと発表した。同相は前政権の麻薬撲滅政策の支持者として知られ、麻薬犯罪者に対する死刑復活をうたっており、辞職を求める声が噴出している。これに対しマルコス大統領は14日、「辞職要求は自分の職務上の怠慢や不正に基づき行われるべきであり、根拠がない」と発言、あくまで擁護する姿勢を示している。
現内閣はすでに行政命令の署名権など強い権力を持つ官房長官と、大統領府の顔として政府広報関連業務を担う報道長官の2大重要閣僚が健康を理由に辞職するなど不安定な様相も見せる。
大統領の初動はレムリヤ司法相擁護となったが、検察庁を監督する立場の司法相の身内の犯罪であることから、世論からの反発は一過性のものに留まらない可能性がある。
長男のフアニト・レムリヤ容疑者(38)の逮捕が発表された13日、司法相は手書きの声明を発表。「私は息子の窮地に介入したり、影響力を行使したりしない。萎縮も贔屓(ひいき)もせず職務を遂行したPDEAに感謝する」と述べた。長男に掛けられる違法薬物輸入容疑が有罪となれば、拘禁14年~終身刑が科せられると報じられている。
コラムニストで医療人類学者のギデオン・ラスコ氏=フィリピン大講師=はツイッターで「自身の息子に麻薬犯罪の疑いが掛かったことで、司法相は道義的権威を喪失した」として即時辞任を要求。社会学者のアッシュ・プレスト氏=アテネオ大講師=は「この6年間で最も犯罪的とされる行為を司法相の息子が犯したとき、弁明文書を書くだけで許されていいはずがない」と述べた。
2019年7月、当時下院与党院内副総務だったレムリヤ氏はインタビューで麻薬犯罪者への死刑に賛意を表明した上で、「麻薬犯罪者は至るところで生き残るゴキブリのような存在だ。社会に害悪をもたらす状況には真の終止符を打つ必要がある」と発言していた。(竹下友章)