「人道支援、防衛で協力強化」 比空軍、空自の共同演習
比空軍と航空自衛隊がパンパンガ州で共同演習。初めて比空軍・空自双方の航空機投入
パンパンガ州マバラカット市の比空軍基地で23日、比空軍と航空自衛隊の共同演習「同心―バヤニハン」実施に関する共同記者会見が開かれた。演習にはコナーアンソニー・カンラス比空軍司令官、井筒俊司航空幕僚長の空軍・空自トップが参加。21日に始まり、きょう全日程を終える。2回目となる今回の演習では、初めて比空軍と空自双方の航空機が投入された。比空軍・空自の人道支援・災害救援、捜索救難能力の向上を目的とし、両国内だけでなく周辺各国への人道支援能力の向上が期待される。また、専門家意見交換(SMEEs)では捜索救難のほか、航空監視・警戒活動についてもトップレベルで意見が交わされた。
演習は2015年1月29日に国防省・防衛省間で取り交わされた防衛協力・交流に関する覚書、19年6月4日に比空軍・空自間で取り交わされた相互協力強化合意に基づく。
今回は、マバラカット市の基地のほか、タルラック州カーネル・エルネストリビナ基地、ラウニオン州ウォーレス基地で実施。比空軍から309人、空自から16人が参加した。比空軍は空自の、空自は比空軍の所有する戦術輸送機C130にそれぞれ搭乗し、救援物資の積み下ろしや物資投下の訓練を実施した。
▽初の国産装備品移転
国防に関する日本の協力についてカンラス司令官は「かつて比日関係は経済のみだったが、いまや災害救助、国防の分野まで拡大し始めた」と指摘。記者団に対し「(日本から輸入が決定している)管制警戒、対空レーダー4基のうち1基は、現在ウォーレス基地内にレーダー関連施設が建設中で、早ければ今年中に完工する。残り3基は2024年までに引き渡される見込みだ」と明らかにした。
同レーダー輸出は、14年に閣議決定された「防衛装備移転三原則」に基づく初の国産完成装備品の海外移転事業。契約価格は総額1億350万ドル(約110億円)。日本製の高性能レーダーは南シナ海(比名・西フィリピン海)の排他的経済水域(EEZ)などをカバーする予定。
▽特攻の地での演習
演習が実施されたマバラカット市は、太平洋戦争中に最初に神風特別突撃部隊が組織された場所でもある。同地で演習を実施するにあたっての所感ついて、井筒空幕長はまにら新聞の質問に対し「祖父は大正生まれで(戦争中日本が占領していた)ニューギニアに行っていた。自分は身近な人から戦時中の話を聞けた世代だった」と振り返り、同地での演習は「歴史的な場所に立って身の引き締まる思い。戦後何十年経ってやっと去年、共同演習が実現したということは、比側が日本を認めてくれた証だと考えている。先の大戦の反省、比の歴史への敬意を踏まえながら過去と未来を見て、協力関係を進めていくことが重要だ」とコメントした。
最初の神風特攻隊は大西瀧治郎中将指揮下のマバラカット日本軍飛行場で編成され、1944年10月21日に初出撃。特攻隊戦没者慰霊顕彰会によると航空特攻による日本軍殉職(じゅんしょく)者は海軍2531人、陸軍1417人の計3948人。米軍には特攻攻撃でその2倍の死者が出たとされる。特攻を「統率の外道」と自認していた大西中将は戦後割腹自殺した。
旧飛行場跡の特攻隊慰霊碑は、少年期に飛び立つ特攻機を見送ってきた比人歴史家・画家の故ダニエル・ディゾン氏の尽力によって74年に建てられ、ピナトゥボ火山噴火後に再整備されている。(竹下友章、ロビーナ・アシド)