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4月30日のまにら新聞から

「沖縄の海そのもの」 世界的なアーティストデュオ「KANEKO」

[ 1967字|2022.4.30|社会 (society) ]

リサール州アンティポロ市のピント美術館で、「石垣ブルー」を基調とした作品で知られるKANEKOとフィリピン人陶芸家3人による展覧会のオープニング式典

(上)ピント美術館で開かれている展覧会「茶碗の解放―比日友好の黄金時代を祝福して」の初日オープニング式典で挨拶するKANEKOの金子晴彦さん(右から2人目)と妻の聖代さん(右端)=24日午後5時過ぎ、リサール州アンティポロ市で岡田薫撮影。(下)会場では招待客らが中央に「海」が入ったKANEKOの抹茶茶碗に見入っていた=24日午後7時ごろ、リサール州アンティポロ市で岡田薫撮影

 リサール州アンティポロ市のピント美術館で24日、陶器とガラスの融合による独特な「石垣ブルー」を基調とした作品で知られる、KANEKO(金子晴彦さんと妻の聖代さん)とラネール・アブエバさんをはじめとするフィリピン人陶芸家3人による展覧会「茶碗の解放―比日友好の黄金時代を祝福して」のオープニング式典が行われた。会場には在フィリピン日本大使館や比の陶芸家をはじめとする芸術関係者や愛好家ら約100人が集まり、6月まで続く同展覧会の開始を祝福した。

 ピント美術館は、国内の芸術家による絵画をはじめ、芸術作品の収集家・パトロンとして知られる脳外科医ホベン・クアナン医師の所蔵品を主に収蔵。展覧会は同美術館主催で、日本大使館も協力した。

 山本恭司駐フィリピン日本国公使は「芸術はこれまでにも人々と国とを繋ぐ架け橋になってきた」とし「今日『茶碗の解放』を通して、われわれの友好関係が花開くのを目の当たりにする光栄に恵まれた」と喜びを述べた。展覧会では、過去に在比日本国大使館に寄贈していたピナツボ火山の灰を使用した茶碗も出展された。金子さんが2018年に現地の川底から自ら採取した灰を釉薬に、900年前の天目茶碗を再現したもの。

 金子さんと茶碗との出会いは、特攻隊員だったが生き延びた父親が師事していた写真家の土門拳氏と、写真集「古寺巡礼」の撮影の一環で訪れた京都の寺で、天目茶碗に遭遇したのがきっかけだった。「ちょうど沖縄本島に電気が通ったころで、与論島をはじめ奄美諸島にはまだ電気も通っておらず、貧しい島の観光の助けになるとの思いから、1970年代から父親がよろん焼を始めた」。それ以前の64年、まだ幼かった金子さんが、たまたま牛乳瓶で遊んでいて、父親の作っていたミネラルが豊富な粉末状の鉱石の釉薬に、透明な牛乳の瓶の底を入れてみた。すると「そのガラスが溶け、こういう色(青)が湧いてきた。沖縄の海そのもの」だったという。その後、金子さんが石垣島に拠点を移した。

▽茶碗のインスタレーション

 展覧会での24個の茶碗によるインスタレーション「Perfect Misfits(完全なるはぐれ者たち)」には、石垣ブルー(地元沖縄の石垣島を取り囲む海)が入る。KANEKOによると、天目茶碗は茶会で使用される最も格の高い茶碗であり、真正の天目茶碗には厳しい決まり事がある。そんな茶碗の底に生命の印としてガラスの青を加えたことは、その掟を破ることでもあった。「その茶碗はいつしか陶片となり、ひとつひとつの陶片がブルー・ウェーブ(青波)、そこにある記憶となっていく」

 商工会議所を通じて展覧会開催を知ったという沖縄県フィリピン委託駐在員の屋良朝彦さんは「沖縄にこのようなアーティストがいることに感動した」と言い、「全く違う色合いの作品をこんなに作られて」とKANEKOの作品に感嘆した様子だった。

▽海辺の生活が作品に

 神戸に約10年滞在した経験を持つ、バタンガス州在住の陶芸家パブロ・カパティさん(47)は、クアナン医師から展覧会への出品に声を掛けられた。1999年に日本から比へと戻り2003年からプロの陶芸家として穴窯で生み出した作品を世に送り出してきた。「茶道はとてもルールが厳しく、私は茶碗の使い方などはそこまで知らない。それでも『茶碗の解放』というタイトルから、伝統的な製法には則っているが、伝統にとらわれない器を追求」してきた。KANEKOの作品について「釉薬と色合いなどコントロールが素晴らしく美しい。作品から海辺に住むことが感じられ、その生活が伝わってくる」と称賛した。

 技能実習制度を通じて青森で3年間焼き物を学んできた陶芸家ジェゼル・ウィーさん(31)の作品も並んでいた。「首都圏ケソン市の陶芸スタジオで制作し、リサール州タイタイの友人所有の窯で焼いている」というジェゼルさんの実家はパラワン島だ。「雪が多い青森でよく苔を目にした。そうした山の自然とパラワンの海を融合させた」と作品を説明。

ジェゼルさんは幼少のころから、身近なテラコッタの陶器に興味を持ってきた。フィリピン大美術学科に在学中、教授から青森での陶器研修を紹介されたという。KANEKOの作品について「海のようで、実家を彷彿とさせる。私にとって非常に温かいもの」とし「金子さんのガラスと釉薬を混ぜ合わせる技術はとても興味深い」と語った。

 展覧会は4月24日〜6月20日まで、火曜〜日曜の午前10時〜午後6時まで、ピント美術館のギャラリー7にて開催中。同美術館では予約受け付けは行っておらず、入場料は大人250ペソ、高齢者または身体に障がいがある人は200ペソ、学生は125ペソ。ペット連れ込みは不可。(岡田薫)

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