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4月12日のまにら新聞から

「売っているのは支援の機会」 アラバンの野菜・果物直産が終了

[ 1618字|2022.4.12|社会 (society) ]

モンテンルパ市で開かれていた、国内農家が栽培した野菜・果物の産地直販イベントが終了

(上)アヤラ・タウン・モールで行われた「ルーラル・ライジング・フィリピン」主催の野菜・果物の産地直販イベント。(下)産地直販イベントで、野菜を詰めずに寄付する形で返却された段ボールを手にする「ルーラル・ライジング・フィリピン」のエース・ストラーダ代表=10日午前、首都圏モンテンルパ市アラバンで岡田薫撮影

 8~10日にかけて首都圏モンテンルパ市アラバンのアヤラ・タウン・モールで開かれていた、国内農家が栽培した野菜・果物の産地直販イベント「ボックス・オール・ユー・キャン(段ボール詰め込み放題)」が終了した。3日間のイベントのために用意された16×16インチ(約41×41センチ)の箱2000個(1箱699ペソ)のうち、10日正午までに約1500箱が出払い、はじめの2日間で約20トンが売れる盛況ぶりだった。

 同イベントはバギオを拠点に困窮する農家への支援活動を事業とする企業「ルーラル・ライジング・フィリピン」が主催。野菜の仕入れ先はバギオ市をはじめ南イロコス、マウンテンプロビンス、アウロラ、ヌエバエシハ各州など。

 同モールの屋内会場には最終日の10日、開場の午前10時には子ども連れの家族を含め10数組が集まっていた。一度に入れる人数は15人で制限時間は10分だ。ルーラル・ライジングの設立者で、代表を務めるエース・ストラーダさん(52)は会場で、国内農家が仲介業者から安く買いたたかれ、貧しい生活を余儀なくされている現状や廃棄の憂き目にある野菜について説明した。また「私たちは野菜類を売っているのではなく、支援する機会を売っている」との理念にも参加者は興味深そうに耳を傾けていた。

 ストラーダさんによると、国内の農民は仲介業者を通す以外の販路がなく、「どうか買ってください」とお願いする状況に追いやられている。「国内に良い農家がいるのに、輸入に頼る必要はどこにもない。作った野菜を売る機会が見つけられずに困っている農家がいる限り、私たちが販路を作ってあげたい。仲介業者の2、3倍の正当な値段で買い取る」さらに「日本の農家はメロンを育てるのに音楽を聴かせ、赤子のように大切に扱っていると聞く。フィリピンの農家にも価格を心配せず、質の向上に集中してもらえたら」との思いを語った。

 カビテ州バコール市に住むエドナ・マングラランさん(41)は、7歳と6歳の息子、5歳の娘、そして親戚の女性と参加した。「たまたまフェイスブックでこの活動を知って共感した。実際に来たのは今日が初めて。国内の農家を助けると同時に私もこの機会を楽しみたい」と話していた。同様のイベントは過去4回開かれている。

▽農家の青年も手伝う

 実家で栽培した野菜も含まれているという農家の男性は、ボランティアとして3日間、一時間ごとに届く野菜の整理や補充を手伝っていた。人気商品として「サヨテ(ハヤトウリ)、トウモロコシ、パイナップル、スイカ」などを挙げた。「昨日までは30種類ぐらいあった。届けられる野菜は毎日少しずつ違う」と教えてくれた。10日には玉ねぎや人参、チンゲンサイ、オクラ、茄子など約20種類が見られた。

▽アヤラ家も訪れる

 ストラーダさんによると、同モールを所有するアヤラ・コーポレーションのハイメ・ゾベル会長の娘、マリアナ・ゾベルさんも同期間中に客で訪れている。精算時にマリアナさんの野菜が箱上部に飛び出ていたため、ストラーダさんは「これは取り過ぎだから、減らしてほしい」と求めたことを明かした。「ここの所有者にそんなこと言わなくても」と周囲は驚いた様子だったという。しかし、マリアナさんは笑って理解を示し、ストラーダさんも笑いながら「別に生産品が入った袋をプレゼントした」。マリアナさんからは「農家の置かれた状況を学べるこうした機会は得難いもの」とし、アヤラ所有の「他モールでもやってほしい」旨を伝えたという。

 ルーラル・ライジングは月1の頻度で同様のイベントを開いており、ケソン市のUPタウンセンターやタギッグ市ボニファシオ・グローバル・シティー(BGC)のハイストリートでも、実施する計画がある。

 今回売れ残った野菜は後日、ケソン市パヤタスをはじめ貧困層が多い複数地区を回って、無料配給するという。(岡田薫)

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