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3月20日のまにら新聞から

コロナ下で移民労働者の待遇悪化 アジア移民者調整機関報告

[ 1404字|2022.3.20|社会 (society) ]

移民のためのアジア太平洋ミッションなど複数団体が、コロナ禍での状況を報告し合う国際フォーラムを開催

アジア太平洋地域の移民労働者のコロナ禍での状況などを報告し合う国際フォーラムが、オンライン上で開かれた=18日

 移民のためのアジア太平洋ミッション(APMM)やアジア移民者調整機関(AMCB)、農業従事者組合連合(UMA)など複数団体が18日、アジア太平洋地域の移民労働者のコロナ禍での状況などを報告し合う国際フォーラムを開催した。発表者はフィリピン人やインドネシア人、マレーシア人など各共催団体の関係者らで、英語やタガログ語、インドネシア語の同時通訳も付けられた。オンライン開催の同フォーラムには約90人が参加した。

 AMCBのスリング広報担当は、各国の移民労働者へのコロナ禍での差別的な待遇など概要を説明した。香港ではその多くが職を失い、結果として収入を得る術を断たれた。人員調整による稼働率の縮小で、仕事量や労働時間が3倍になったとの報告もあるという。家事労働者が大半を占める中、移民労働者の感染時に隔離場所が用意されていないことや、本国政府のホットラインもつながらないなど通信途絶が続いた。また、家事労働者が感染源であるかのような言説にも晒されたとしている。

 約24万7400人の家事労働者が働くシンガポールでは、その大半が比人とインドネシア人、ミャンマー人で占められている。シンガポール政府の厳格な防疫措置で職を失った移民にとって、本国の斡旋業者への借金を抱え、深刻な問題が生じていると報告。また、雇用を維持できた家事労働者にとっては、コロナ禍の閉塞的な経済環境と家庭の中で、身体的・性的虐待へのリスクが高まったという。

 外国人の家事労働者23万1572人が働く台湾では、その56・5%が就労許可証を得られず不法滞在に陥っており、こうした外国人への雇用者の虐待や嫌がらせは、同じ台湾人同士のそれに比べて3倍多いとも言われる。

 比人とインドネシア人が家事労働者の大半を占めるマカオでは、外で人と集まる機会が未だに禁じられており、本国を含む両国政府からの支援が行き届かない状況が続く。就労査証(ブルーカード)の発行が禁じられたままで、行き場を失くした移民労働者の送還問題も未解決だとしている。

▽台湾では「魔女狩り」も

 台湾北西部の桃園市を拠点に移民の権利向上に努める人民奉仕協会(SPA)の代表で比人のレノン・ウォンさんは、台湾で移民の感染に端を発した社会的パニックの事例などを紹介した。新型コロナの流行が始まって間もない2020年2月、インドネシア人女性で不法就労が続いていた陽性患者の行方を当局が見つけられず、電車内の監視カメラに映る姿を公開。社会が「魔女狩り」に躍起となった。

 それを機に以前にも増して不法移民の台湾からの排除を唱える声が強まった。台南市の首長など公に反移民キャンペーンを張る者も現れたという。後に現場労働者らブルーカラーの移民への再入国許可が20年3月~21年3月末まで停止となり、一時帰国や家族の葬式のための帰国すら許されない状況が発生した。また「移民労働者」に限定した外出や移動の制限を実施する雇用者や首長も出現し、現在も継続している例もあるという。

 さらにマレーシアでは、イスマイル・モハメド内務大臣が2018年~22年2月15日にかけて入管施設内で拘束中の移民の死亡例が208人に及んでいることを認め、うち25件が新型コロナに因るものと公表した。同国では移民が感染源だとして政策的に移民の大量逮捕・収監が実施されたとの報告もなされた。(岡田薫)

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