「防犯効果薄くリスク高い」 SIM登録法に専門家懸念
SIMカード登録法に「サイバー犯罪予防効果は薄く、個人情報を危険にさらす可能性」との声
上下両院が2日に承認し、発効まで大統領の署名を待つだけとなったSIMカード登録法について、専門家から「サイバー犯罪防止効果は薄く、プライバシー侵害のリスクは高い」と疑問視する声が上がっている。5日付英字紙スターが報じた。
国際非営利団体「アジアファウンデーション」のサイバーセキュリティー部門に所属するアナリストのメアリー・サントス氏は4日、英字紙スターの取材に対し、他の新興国や欧州連合(EU)諸国の例から「SIMカード登録により犯罪防止効果があるという実証的証拠はない」と指摘。「類似法が施行されたカナダ、チェコ、オランダ、アイルランドなどでは犯罪防止効果がないことが分かっており、2009年にSIMカード登録法を施行したメキシコはわずか3年で廃止している」と説明した。
同氏はまた「通信事業者には完全な本人確認を行うのは困難だ」と指摘。登録済みのSIMカード利用し、他者になりすまして行う犯罪が新たに可能になると警鐘を鳴らした。
比のSIMカード登録法は、ソーシャルメディアアカウント作成時に実名と電話番号の登録も義務付けている。これに対しては「比国内に事業所を持たないソーシャルメディア企業への義務付けは極めて困難。熟議を経て追加された条項とは到底考えられない」と現実性の欠如を指摘した。
比プライバシー委員会のアイビー・ビリャソト氏はソーシャルメディア条項を「曖昧さの残る付け足し条項」と批判。SIMカード登録義務化については「個人情報流出のリスクを高め、基本的なプライバシーの権利を危険にさらしかねない」と懸念を表明した。また、有効な身分証を持っていなかったり、登録手数料の負担ができない貧困層が結果的に「通信サービスから排除される可能性もある」と指摘した。(竹下友章)